安倍首相が、内閣改造の腹を固めたという。

「6月22日に予定される通常国会閉会後から、秋の臨時国会召集までの間に内閣改造と党人事を行うと、幹部たちに指示を出したと言われています。早ければ、6月中にも改造人事が発表になるはずです」(全国紙政治部デスク)

来年10月に予定されている消費税率10%への再引き上げ、さらには集団的自衛権行使容認といった重要課題を控え、「新布陣で臨むのが妥当と判断した」(首相周辺)というのだ。

自民党が与党に復帰し、安倍内閣誕生(2012年12月26日)から1年半。
「その間、内閣改造がなかったため、党内には"オレは、いつ入閣できるんだ"の不穏な空気が充満している。"党内政治"が抜き差しならなくなっていたのも、内閣改造の理由のひとつ」とは自民党中堅議員の弁。

一方、これまで"1強体制"を誇ってきた安倍首相も、靖国神社参拝以来、その勢いに微妙な陰りが。
「依然、高い支持率を維持してはいるが、首相は改造で心機一転し政権をさらに盤石にするつもり」(前同)

ただし、永田町では「改造するたびに支持率を落とす」が定説。
入閣で喜ぶ議員がいる一方、夢破れた議員には恨みを買うことになるからだ。

首相周辺も、そんなことは百も承知。
支持率20%台の"死に体"内閣なら失うものは少ないが、高い支持率を誇っている安倍内閣だけに、「慎重かつ万全を期して」(同)が、改造に求められている。

そこで本誌は、入閣が"凶"と出そうな"時限爆弾"改造人事議員リストを入手。
以下、公開したい。

爆弾リスト筆頭に挙がっているのは、意外や"首相の右腕""縁の下の力持ち"と評されるキレ者、菅義偉官房長官。

「菅官房長官には、独特のバランス感覚があり、首相発言のフォローや、側近たちの失言にブレーキをかけています。"内閣スポークスマンとして最適"と衆目は一致。今、そんな菅氏を交代させることはバクチにも等しいと思いますけどね」(全国紙・自民党番記者)

ただ、ここにきて菅官房長官と安倍首相の間には、微妙な食い違いが目立ち始めたのも事実だ。

「菅氏は、安倍首相に意見できる数少ない人物。首相周辺には"お友達"が多いとされますが、菅氏はそうした中では異色。首相はその力量を十分に理解していますが、周辺は菅氏を煙たく思っているようです。集団的自衛権など、今後、安倍政権の"本丸"である安保政策に突っ込んでいくとなると、首相と菅氏の考えは微妙に食い違いが生じてくる。次の官房長官人事は、このあたりがキーだと思います」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

事実、首相周辺は、側近ではあるが"お友達"ではない菅官房長官の首のすげ替えを強く望んでいるという。

後釜に噂される人物は3人。
筆頭は、"お友達中のお友達"、甘利明・経済財政政策特命担当大臣という。

「4月のオバマ大統領訪日でもTPP交渉で妥協せず、国益を死守したと首相周辺は甘利氏をベタボメしていますからね」(前出・自民党番記者)

残る2人は、側近の萩生田光一・総裁特別補佐と衛藤晟一・首相補佐官。
荻生田氏は慰安婦問題で、河野談話の検証次第で新談話を出すことを検討すべきと発言し、菅官房長官から注意を受けた御仁。

衛藤氏は首相の靖国参拝に失望したと表明した米国に、「(こちらこそ米国に)失望した」と応戦し、発言撤回に追い込まれた"前科"を持つ。

「この2人のいずれかを官房長官にしたら"安倍政権は終わり"と、党内では噂されています」(秘書筋)

一方、菅官房長官と同じく"超ド級の不発弾"と目されているのが、石破茂・幹事長だ。
衆参で400名を超える巨大自民党を大過なく率いてきた手腕は、一定の評価を得てもよいのだが、「石破さんの処遇は、菅さんの処遇と連動しています。もし、菅さんが飛んで幹事長に横滑りしてきたら、石破さんは防衛大臣あたりにはめ込む案が出ています。元来政策通で、尖閣事案にしても集団的自衛権にしても、一家言ある人ですからね」(前同)

今年11月には福島、12月には沖縄県知事選がある。

それぞれ原発、安全保障と国政に直結するインパクトを持つだけに、自民党としては負けられない一戦。福島、沖縄で一敗地にまみれると、来年4月の統一地方選にも響く。ただし、「現在、自民は劣勢」(前出・中堅議員)という情勢だ。

したがって、"負け戦"の責任を取らされる幹事長職に魅力はないはずだが、「先日、石破氏に会った印象では、やはりフラストレーションが溜まっているように見えました。ただ、石破氏はあえて幹事長留任を希望するのではないか。地方選に敗れ、その責任を取る形で幹事長職を辞す。無役となってから、来秋の総裁選の準備を万全にする計画ではないでしょうか」(前出・鈴木氏)

本当はクビにしたい麻生財相

石破幹事長自身、ここにきて、「(改造)人事をやると喜ぶ人もいるが、外れた人、なれなかった人もたくさんいる。求心力を失う人(時の首相)を、たくさん見てきた」と、内閣改造に異を唱え始めた。
これは、幹事長職留任の決意表明とも取れるのだ。

首相を悩ませているのは、菅、石破両氏だけではない。

現在、当選5回以上で、入閣経験がない"適齢期議員"が43人も在籍する。
彼らは、自民党が野に下った3年に加え、安倍政権下で1年半も"褒美なし"の状態にある。

「こういった面々のフラストレーションは、相当なもの。"血の入れ替え"をしないと、党内の突き上げはもはや、かわせない状況でしょう」(政治アナリスト・伊藤惇夫氏)

なかでも、当選9回の逢沢一郎氏(衆院・岡山1区=谷垣グループ)が、入閣待望組の象徴なんだとか。

「彼が入閣するかどうかは見もの。外されれば、"明日は我が身"の不満分子が量産されますよ」(自民党番記者)

入閣を待ちわびるベテラン勢が焦れる一方、"猟官3人衆"と揶揄されている議員がいる。茂木敏充・経産相と塩崎恭久・政調会長代理、そして、西川公也・TPP対策委員長だ。

「茂木氏は、官房長官に取り沙汰されている甘利氏をして"舌ガンの手術をしたばかりだろう"と、暗に"体調に不安あり"を吹聴。官房長官就任に、強い色気を見せています。また、塩崎氏は第1次安倍内閣の官房長官。それが、現在は政調会長代理という不本意な立場。今回の改造では、なんとしてでも入閣して返り咲きたいはずです」(前出・デスク)

一方、西川氏に至っては担当しているTPP交渉を自画自賛。
難問山積の農水相は自分しかいないと宣伝に余念がないという。

「実は、安倍首相は先の総裁選時、劣勢を挽回するため"カラ手形"を連発しています。茂木、塩崎、西川の3人も手形組。こうした手形がゴマンとあるため、不良債権化し、首相周辺の首を締めているんです」(前出・秘書筋)

安倍首相にとっては、"引くも地獄、進むも地獄"の心境だろう。

不満は入閣争いだけではない。
誰かが入閣するということは、誰かが閣僚からはじき出されるということ。

麻生太郎財務相、石原伸晃環境相、岸田文雄外相ら重鎮たちの処遇も、一歩間違えれば命取りになる。

「石原環境相は、永田町で"もっとも仕事をしていない閣僚"の烙印を押されています。所轄の原発問題でもまったくよいところなく、交代は確実」(党関係者)

ハト派で鳴る岸田派を率いる岸田外相は、安倍首相に従順な姿勢だが、周囲がそれをよしとしないという。
「岸田さんの後ろには"安倍降ろし"の重鎮、古賀誠・元幹事長が控えており、ことあるごとに反安倍の"ムシロ旗"を揚げようとしています」(前同)

一方、「安倍政権の中核を担うのが麻生太郎副総理であり、為公会(いこうかい)(麻生派)であります」と、派閥会合に招かれた安倍首相が、臆面もなくオベンチャラを使わざるを得ないのが麻生財務相。

「首相はアベノミクス失速を恐れ、できれば消費税を10%へ引き上げたくないのが本音です。その点では、財務省ベッタリと言われる麻生氏とは考えが合わない」(前出・伊藤氏)

失言も多く、アベノミクスを失速させかねない麻生財務相に対し、首相周辺は警戒を厳にしており、「今、官邸は麻生氏を切った場合の影響を分析中のようです」(夕刊紙記者)と予断を許さない。

ちなみに、財務相を外す場合、外相にスライドさせるのが、安倍側近の計画だという。

進次郎の"飼い殺し"破り!!

「"女の戦い"も熾烈を極めています」と言うのは、全国紙政治部デスクだ。

渦中にいるのは、稲田朋美・規制改革担当相、森まさこ・少子化対策ほか担当相、党三役の高市早苗・政調会長、野田聖子・総務会長ら。
彼女たちは、そろって"討ち死"の運命にあるという。

「稲田さんは無難に職務をこなしており、首相の覚えもめでたい。ただ、そもそもワンポイント起用だったため、外されるでしょう。高市さんは首相とウマが合いますが、党内の評判がよろしくない。したがって、これもクビ。野田さんは"更迭女性議員リスト"の最上位。彼女は首相悲願の集団的自衛権に関して、陰では牽制する言動を見せている。致命的なのは、首相と犬猿の仲である古賀元幹事長と蜜月だということですね」(前出・党関係者)

一方で、入閣が確実視される女性議員も。
「有力視されているのは、小渕優子・財務副大臣と丸川珠代・元厚労省政務官の2人。首相は、この2人を安倍改造内閣の目玉として起用したいようです。女性ということで、新鮮さをアピールする作戦でしょう。ただ、小渕さんはサラブレッドであるがゆえか、"生意気だ"と評判がよろしくない。入閣すれば、党内にしこりを残すことは間違いありません」(前同)

来る者を拒まず、去る者を追わず――とはいかないのが、改造人事。

そんななか、今、首相周辺のみならず、一兵卒の自民党議員たちも固唾を飲んで見守っているのが、小泉進次郎・復興政務官の去就だという。

「進次郎氏は、押しも押されもせぬ"自民党のプリンス"。次世代自民党を背負っていく存在であることは、多くの自民党議員の一致するところです」(進次郎議員に近い若手議員)

とはいえ、このプリンス、一筋縄ではいかないのが玉に瑕。
先の都議選で、自民党が推薦した舛添要一氏の応援を「大義がない」と批判。

「また、父・小泉純一郎、細川護熙両元首相が、安倍政権に反旗を翻すかのようの脱原発法人を設立。自民党幹部は、"進次郎が(都知事選で)あんな態度を取ったせいだ"と激怒したといいます」(政治部デスク)

そんな声をバックに、首相周辺は進次郎氏に"飼い殺し"のペナルティを科そうとしているという。

「さっそうと政界入りを果たした当初は、10年で総理が狙えると言われていました。しかし、そのスケジュールは後退しています。安倍首相が退任すれば、麻生、谷垣、甘利のいずれかがワンポイントで組閣するはずです。その次には石破、石原、林などが控えている。このままでは進次郎氏は、20年待つことになりかねません」(前出・鈴木氏)

ところが、こうした流れを一気に断ち切るため、進次郎氏周辺では"ウルトラC"を画策しているという。

「11月の福島県知事選に担ごうという動きがあるんです。バックはもちろん、小泉・細川の立ち上げた反原発法人。普通、県知事というのは"都落ち"ですが、原発対応が争点となる福島県知事選は、国政への影響大。2期くらい務めあげれば、世論は次期首相候補と見るでしょう」(前同)

これぞ、死中に活の大胆不敵な一手かもしれない。

人事一つ誤れば、政権が吹っ飛ぶといわれる永田町。
はてさて、誰が泣き、誰が笑うのか――!?

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