交流戦前は広島、阪神に遅れを取り、セ・リーグ3位と低迷していたものの、交流戦で巻き返し、気がつけば、リーグ首位をがっちりキープしている原巨人。

今年、球団創設80周年を迎えた巨人にとって、リーグ3連覇と日本一奪還は至上命題。このまま優勝へ一直線とニンマリしているG党も多いハズだ。

だが、チームの現状は、実際には、それほど甘いものではないという。

「最も危機感を持っているのは、ほかならぬ原監督ですよ。なにしろ開幕からここまで、投打の主力が噛み合ったことが一度もありませんからね。キレのある采配で、なんとか凌いできましたが、このままペナントレースをぶっちぎれるとは、監督自身も考えていないはずです」(スポーツ紙記者)

投打が"噛み合っていない"部分については後述するとして、巨人首脳陣が最も頭を悩ませているのは、チームの大黒柱・阿部慎之助(35)が攻守にわたって精彩を欠いていることだ。

その理由を、

「今季の阿部は開幕直前、首痛でチームを離脱しています。その後、詳しい検査結果は公表されていませんが、実はかなり深刻な症状だという話があるんです。"神の手を持つ"と言われる医者に痛み止めの処置をしてもらっているそうですが、根本的な治癒には至っていないのが現状です。あまりの事態に"交通事故をもみ消したのでは"という疑惑が浮上するほどです」

とスポーツ紙デスクが明かす。今のご時世、事故のいんぺい隠蔽工作など不可能だが、こんな噂が出るほど状態が悪いということなのだ。

「阿部の開幕からの打撃不振は、この首痛が原因です。首から脊椎にかけて痛みが走るため、どうしても体の開きが早くなってしまう。最近では他球団の投手も阿部に対して、昨年までは怖くて投げられなかったインコースを大胆に突いてくるようになった。こういうふうに見下されて投げられると、とたんに打てなくなる。これはバッターにとって一番辛い状況です」(前同)


阿部の盗塁阻止率も急降下!

原監督自ら「うちは慎之助のチーム」と公言しているように、阿部の存在の大きさは他の選手とは比べものにならない。

12年の阿部は首位打者、打点王の二冠に加えてMVPも獲得。昨シーズンもバレンティンが年間本塁打記録を更新しなければ、2年連続のMVPも夢ではない活躍ぶりだった。

その阿部が開幕から2割そこそこの低打率(6月18日現在で・232)に喘ぐことになろうとは……。

首痛の影響は守備面にも出ている。今季の巨人は、ワイルドピッチ(暴投)が急増した。昨シーズン、年間で39だったワイルドピッチが、今年はすでに19を数えているのだ。

もちろん、ワイルドピッチは投手の責任である。だが、たとえワンバウンドしたボールでも、キャッチャーが逸らさなければ、記録上はワイルドピッチにならないのも事実なのだ。

「確かに、今年の阿部は、去年までなら捕球できていた投球をはじいたり、逸らしたりするケースが目立ちますね」(民放スポーツ局ディレクター)

盗塁阻止率も、昨年の阿部はリーグ2位の・368という強肩ぶりを発揮したが、今季はリーグ5位の・229。これでは相手チームは走り放題だろう。

年齢的な衰えがあることも否めないが、今シーズンに関しては、やはり首痛の影響が大きいと言わざるをえないようである。

負担を軽くするため、阿部にファーストを守らせたことは過去にもあったが、「阿部はキャッチャーというポジションに強いこだわりがありますからね。原監督も、あと2年は阿部が正捕手。3年後に一塁手に転向という青写真を描いているんだとか」(巨人番記者)

だが、首痛がこれ以上、悪化し、長期化するようなら、コンバートどころか、選手生命の危機さえ迎えかねないのではないか。

野球評論家の黒江透氏は次のように言う。

「まだまだ、今の巨人に阿部の代わりが務まるような選手はいませんよ。ルーキーの小林誠司(25)も肩が強くて、いい捕手だけど、阿部とは格が違いすぎる。阿部のようなベテランはシーズンの途中で上手に休ませることも大事。無理してケガを悪化させたら、元も子もないからね」

また、阿部のプレーにおける不調の原因を、こう解説する。

「私の見たところでは、今年の阿部は腰のキレがないですね。自分では捉えたつもりのボールを打ち損じていることが多い。確かに、故障の影響や年齢的な衰えはあるでしょう。でも、阿部は実績のある打者ですから、今季もこのままで終わるようなことはないはずです」(前同)

一つ言えるのは、今の巨人は阿部がコケたら、みんな終わり、という状況になりかねないということだ。

「慎之助は肩、腰、足首にも古傷があるし、満身創痍と言っても過言じゃありません。でも、彼は自分から、"痛い"とか"休む"とかは絶対言いませんからね。それぐらい責任感が強い男なんです。だから今季、慎之助の打撃が不振なのは、投手陣が不調だったせいもあると思う。捕手は自分の打撃のことよりも、投手のリードのことを優先して考えますからね」(野球評論家・橋本清氏)

事実、今シーズンの巨人投手陣は菅野智之(24)がエース級の活躍を見せているが、内海哲也(32)、杉内俊哉也(33)の両左腕はピリッとしない。広島からFA移籍した大竹寛(31)は開幕から連勝したものの、その後、パッタリ勝てなくなった。

「内海は先発10試合目で、やっと1勝ですからね。ただ、勝ちこそつかなかったですが、メジャーでいう"クォリティ・スタート"(6イニング以上を自責点3以内)をしている点は評価できます。大竹は10勝して10敗するような投手ですが、負け越さなければ、それでいいというのが巨人首脳の考えでしょう」(前同)


立ちはだかる巨人キラーたち

昨シーズンは鉄壁を誇ったマシソン(30)-山口鉄也(30)-西村健太朗(29)の中継ぎ・抑え陣も、今季は西村が不調とケガで二軍調整中。勝利の方程式は崩壊したままだ。

一方、打撃陣も長野久義(29)が絶不調。過去に新人王、首位打者、最多安打のタイトルを獲った男が8番を打つような状態。

長野につられるように村田修一( 33)、ロペス(30)のバットも湿り出した。

「6月7日に巨人は19試合連続ひとケタ安打を記録。球団ワースト記録を更新しています。同じ頃にはセの打撃30傑のうち、阿部が最下位の30位。片岡治大(31)が20位、長野24位、ロペス25位、村田26位と巨人の主軸がズラリと並ぶ奇観を呈したこともありました」(全国紙運動部記者)

スランプに喘ぐレギュラー陣の代わりに、打者では亀井善行(31)が気を吐き、投手では今村信喜(20)、小山雄輝(25)ら二軍から抜擢された若手が活躍。改めて巨人の選手層の厚さを見せつける結果になったのだが……。

「逆に言えば、今年の巨人は投打の戦力が揃わないのに、よくやってますよ。そこはやはり原監督の手腕でしょね。キューバから鳴り物入りでやって来たセペダ(34)でも、打率2割に満たなければスタメンから外す厳しさを見せたのもよかった」(前出・黒江氏)

名采配が光るものの、この時期に巨人が首位に立ったのは、少々、出来過ぎだという見方が強いようだ。

「実際巨人が強いというより、交流戦で広島が9連敗と大コケし、阪神が負け越したことによって、タナボタ式に首位が転がり込んだだけ。目下、ライバルと言える広島には新人ながら巨人に強い大瀬良大地(23)がいるし、阪神には巨人キラーの能見篤史(35)、メッセンジャー(32)がいる。このまま阿部が復調しないようなら、巨人は大ピンチ。ペナントレースは、この先、一波乱も二波乱もあるだろうね」(巨人番記者)

巨大戦力を擁する巨人だが、浮かぶも沈むも、主将でチームリーダーの阿部慎之助次第。本当の戦いが始まるのは、もう少し先になりそうだ。

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