「これは単なる訪問ではありません。東アジア情勢に激震をもたらし、日本やアメリカの外交に重大な影響を与える会談になるかもしれません」
日本の外交筋がこう話すのは、習近平・中国国家主席が7月3日、4日に予定している初めての韓国訪問についてだ。

習国家主席は韓国国会で演説するほか、朴槿恵(パククネ)・韓国大統領とトップ会談を行うという。

中国の国家主席が北朝鮮よりも先に韓国に訪れるのは、極めて異例のことだ。
「中国は北朝鮮の金正恩第1書記へ再三、訪中要請をしてきましたが、北朝鮮はそれを渋っています。したがって、今回の訪韓には、その北朝鮮の動きに釘を刺す狙いがあります」(外交評論家・井野誠一氏)

北朝鮮問題は東アジア情勢においては当然、重要な懸念事項だが、それとは別の大きな野望が中国にはあるという。

「先頃、中国が韓国に"属国命令"を突き付けており、その返答を求めに行くのではないかという噂が、水面下でささやかれているんです」(前出・外交筋)

属国命令――なんとも突飛な話に聞こえる。
ところが、実は韓国の有力紙『朝鮮日報』も5月18日の紙面で、中国政府関係者が韓国高官に〈朝貢関係に戻ってはどうか〉と伝えたと報じたのだ。

朝貢とは、中国皇帝に対して他国の君主が貢(みつ)ぎ物を捧げ、中国皇帝がそれに応えるという貿易形態。
つまり、その国は中国を宗主国として仰ぐ形になり、中国の属国の扱いとなる。

韓国は現在でこそアメリカと同盟関係にあるが、中国が19世紀に日清戦争などに敗れる以前は中国に朝貢しており、属国関係にあった。
「朝鮮日報は"真剣な場面での話ではなかった"と伝えていますが、冗談で言えるような話ではありません。その属国命令に対して、韓国側が抗議をしたという話も聞こえず、逆に中国の王毅外相の訪韓を受け入れている姿が不気味に映ります」(前同)

ここで気になるのは、現在、韓国が同盟を結んでいるアメリカの立場だ。
「朴大統領は長年、交際してきたアメリカのオバマ大統領という"彼氏"を捨て、習主席という"パパ"に乗り換えたと見るべきでしょう」(在韓記者)

実際、朴大統領は昨年2月に大統領に就任して以来、一貫して中国にすり寄る姿勢を見せてきた。
その結果、今年2月2日に62回目の誕生日を迎えた朴大統領は、習主席から「誕生祝い」のバースデーレターをもらうなど、密接な関係にあるのだ。

「その効果ではないですが、4月末にオバマ大統領が訪韓する際、朴大統領は2日前に、わざわざ習主席へ電話をしているんです。自国の外交行動を前もって他国に報告するとは前代未聞ですが、中国側は忠誠心あふれる行動ととらえています」(前同)

もともと、この両者の"なれ初め"は、歴史認識などをめぐっての日本への強い対抗心だった。
「3月24日、核安全保障サミットに出席するためにオランダ・ハーグ入りした両首脳は会談し、その際、日本の首相で初代韓国統監の伊藤博文を暗殺した安重根の記念館が今年の1月に中国にオープンした問題で、こんな会話が交わされていました」(通信社記者)

要約すると、次のとおり。
習「私が記念館建設を指示した。これは、両国国民の安重根への思いを強めると同時に中韓の重要な結びつきとなる」
朴「両国国民から尊敬される安重根義士を偲(しの)ぶ記念館は、中韓友好の象徴です」

世界的に言えば、安重根は一国の首相を暗殺した国際的なテロリストで、両者の発言は世界常識から明らかに逸脱したものだ。

ここまで中韓が接近した裏には、双方が抱える事情があるという。

中国事情に詳しい作家の宮﨑正弘氏が話す。
「中国と関わりが強いASEAN諸国で中国を支持するのは、カンボジアだけ。外交面でゴリ押しする中国の姿勢が世界中で嫌われ、今や中国は国際的に孤立して、四面楚歌(しめんそか)の状況です。そのため、せめて1500年間も自分の"家来"だった韓国を属国に、との考えが見られます」

一方の韓国にとっては、中国は何にも増して重要な立場にあるという。
「昨年、中国は韓国の最大の貿易相手となり、韓国国内への観光客数でも最多になりました。景気減速に悩む韓国経済にとって、最大の金脈である中国は絶対に逆らってはいけない存在と言えます。まさに、米びつを握られたも同然の状況なんです」(経済エコノミスト)

『悪韓論』などの著者で知られる評論家の室谷克美氏は、韓国に手厳しい意見を放つ。
「韓国は"沈むアメリカ、昇る中国"という心情から中国へのめり込んでいますが、その背景には、中国に平身低頭してきた過去の歴史、つまり、染みついた奴隷根性があると思いますね。言い換えると、誰かをご主人様に仰がなければならない主体性のなさが露呈してしまった格好ですね」


米軍基地の韓国撤退を要求!?

さらに室谷氏は、習主席の訪韓の際に、何かが起こる可能性があると、こう続ける。
「その旧宗主国の"大皇帝様"がわざわざおいでになるのだから、属国としては手ぶらで返すわけにはいかない。必ず何らかのお返しを用意しているはずです」

実は、これに関して前出の井野氏が
「中国は、日米韓の協調体制を切り崩し、特にアメリカと日本を牽制(けんせい)するつもりではないか」
と話すように、こんな情報も流れている。

「すでに中国側は韓国に極秘裏に、アメリカとの同盟関係を見直すよう求めたと噂されているんです」(前出・通信社記者)

米韓同盟の破棄は、日本を含めた東アジアの情勢を一変させることを意味するもので、
「6月26日からハワイ沖で始まったリムパック(環太平洋合同演習)に中国海軍が初参加しました。米中が軍事面で共同演習するのは極めて珍しいことなんですが、実は、中国が韓国属国化で米韓同盟を切り崩したあと、敵国となる日米の軍事力を探る目的があると言われているんです」(軍事ジャーナリスト)

そのうえ、中国は対日米策として、韓国に"出先"を設けるつもりだという。
「韓国・済州島の海軍基地への寄港を認めさせて共同利用を促し、将来的には中国軍のものにしようと画策しているようです」(前同)

当然、これは韓国だけの問題にとどまるものではない。
「済州島は九州の目と鼻の先ですから、日本の安全保障上、決して無視できる話ではありません。さらに、中国が韓国の軍事権を握れば、韓国内の米軍基地の撤退を要求するでしょうから、アメリカが激怒することは必至。もちろん、中国と関係悪化が続く東南アジアからも大反発を買いますよ」(同)

この意見に前出・室谷氏も同意する。
「韓国が中国にすり寄る姿勢を改めないと、亡国の憂き目を味わうことになりかねません」
大国の属国要求を受け入れて軍事権まで引き渡し、さらに諸外国との関係を破棄する――。
韓国が最後に選択するのは、自尊心と周辺国との平和か、それとも、赤い皇帝の理不尽な要求なのか。

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