医療界はもちろん、我々一般人にとっても驚愕の事実が明るみになった。

6月24日、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が『絶対に受けたくない無駄な医療』(日経BP社)を上梓。
その中で、日本医療界の常識と慣例を真っ向から否定したのだ。

同書は、米国医学界の71学会が参加して行われている「無駄な医療撲滅運動」の一環で公表された「無駄な医療」250項目を翻訳。

その中から100項目を厳選し、分析したものだ。

室井氏が出版に踏み切った理由を、こう話す。
「このリストは、国際的に評価の高い米医学界が、日本の医療界で当たり前に行われていることに公然と"やめろ!"と言っているもので、読んだときは衝撃を受けました。これを日本で公開すれば、患者にとって自らの判断、治療、予防の選択肢を考える意味で大いに役立つと思ったんです」

我々の健康維持にとって、医師の考えは絶対と思われていたが、それが世界の最先端医療では必ずしも正しいものではないというのだ。

そこで、本誌は"医者に殺されないための心得"を徹底取材。
そこでわかった驚愕の事実をお伝えしよう。

まずは、日本人の死因のトップであるがんについて、室井氏のデータを紐解く。
実は、室井氏の著書の中でも最多となる24項目において、がんについて述べられている。

その中でも目を引くのが、前立腺がんに関する提言だ。

「がん治療で最先端を行く米放射線腫瘍学会は、前立腺がんの場合、ほとんど命に関わらない小さな腫瘍段階で見つかる事例が多く、手術の必要がない患者が少なくないと結論づけていますが、日本では逆。"切って切って切りまくるハチャメチャ治療"が横行していて、鉛筆の芯ほどの小さな前立腺がんでも、見つければ即、摘出手術となります」(前同)

がんは発見と同時に、すぐ取り除くものと思われていたが、そうではなく、
「放置するのも手」
だと言うのだ。

「注意深い経過観察をし、進行が見られない限り治療を開始しないというのが現在の米医学界の主流です。小さいがんの段階で、それを除去することは、医者からすれば簡単な手術で済むので、やればやるほど儲かるし、患者にとっても、小さいとはいえ、がんがなくなるということでウイン・ウインの関係に見えますが、実際はそうではないということです」(同)

そもそも、がん治療にあたっては、治療計画を作ってから進めるべきなのだが、日本ではそれが必ず行われているわけではないという。

それがゆえに、医師の行う直接のがん治療のみを重要視しすぎ、再発の危険性を高めているそうだ。

「計画がないために適切なリハビリや精神的支援、不要な医療サービスの排除が軽視されているんです。現在、手術したら治療も終わりとして患者は放置され、しばらくしてから再発、死亡してしまうという最悪の事態につながることが、ままありますから」(同)

そのために、もし、自分や周りの人ががんと診断されたら、病気や治療についての情報を集めることが大切だという。

「日本癌治療学会や国立がん研究センターがん対策情報センターのホームページに、がん情報が充実していますので、ぜひ読んでもらい、治療計画立案に向けて知識を深めてほしいです。もし、周囲に英語を読める人がいるのであれば、米国国立生物科学情報センタパブメドー『Pubmed』に当たることをお奨めします。ここで、かなり新しめの治療法や情報を得られますから」(同)

一方、がんのみならず、日本医療界の"常識"を覆す報告がたくさんある。

たとえば、CTスキャンの安易な利用は慎むべきだという。
「米医学界は、軽度の頭部外傷でのCT検査は有害との立場に立っています。CTスキャンによる被曝量は、1~10ミリシーベルト。東京電力が公表したデータによると、福島第一原発の作業員の1か月の最大被曝量が10ミリシーベルト程度ですから、いかに多い数字かというのがわかります」(同)

このCT検査の実施件数は、日本で年間4000万件と推測され、これまで我々にとって、いかに身近なものだったかがわかる。

また、日本人の多くが悩んでいる腰痛治療にも疑問符が付けられている。
「米内科学会は、腰痛診断における単純X線検査やCT検査、MRI検査は症状改善につながらず、ほぼ不要と一刀両断。腰痛発症から6か月以内の画像検診は必要ないでしょう」(同)

これらは、「無駄な医療撲滅運動」が指摘する問題点の一部にしかすぎない。


良い医者と良い人は別問題!

ほかにも、
「胸やけに安易に薬を使わない」
「ストレス性胃潰瘍に投薬しない」
「サプリメントは健康維持に効果なし」
などなど、日本の医療界にとって衝撃の事実が突きつけられているのだ。

「医師といっても、すべての人が最新の情報に触れられるわけではないんです。医師は良い人が多いんですけど、それと良い医者であることはイコールではありませんから」(同)

これまで、
「長生きしたければガン検診は受けるな」
「大がかりな検診は意味がない」
「検査が余病を引き起こす」
など、日本医学界の"数々の病症"を告発し続け、7月9日に『医療と健康の常識はウソだらけ』(カンゼン)を上梓する新潟大学名誉教授の岡田正彦氏(医学博士)が言う。

「最近、日本人間ドック学会が、日本で常識とされてきた血圧値に異議を唱え、それまでの基準、上の血圧140以上、下90以下に対し、上が147、下94の新基準を発表。現在、波紋を広げています。今後、このような論争が、あらゆる医療分野で起こり、日本の医療界が持つ問題点が改善されていくことを強く望みます」

その岡田名誉教授が伝授してくれる心得は、クスリや医者との上手なつきあい方だ。
「診療を受ければ薬を処方されますが、単に風邪を引いただけなのに薬をどっさりと処方する医師は避けたいですね」

また、新薬を処方したがる医師にも疑義を唱える。
「新薬は効果が高い一方で、副作用が強いことが一般的。ですから、新薬が出たからといってすぐに飛びつく医師も、私ならご遠慮させていただきたいですね」

また、機会があるごとに大掛かりな検診を好む医者も避けるべきという。
しかも、CTスキャンを使った検診の危険性については、前出の室井氏と一致した。
「CTスキャンを繰り返し受けることで、がんの発症率が10%強増えるというデータがあるんです。もちろん、検診はしたほうがいいでしょうが、私は血液検査や尿検査で十分だと思っています」(前同)

我々一般人にとっては遠い世界で、専門家に任せることしかできないと思われた医療の世界だが、決してそうではなく、一人一人が意識を持つ必要があるようだ。

「私の本がキッカケとなり、今後、日本でもよりよく生きるための医療が構築されていくことを願ってやみません」

室井氏が強く求める医療の改善と間違った現場。
あなたは、この事実を正面から受け止めることができるだろうか。

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