ニセモノといえば中国。そんなニセモノ大国で更なるスケールのニセモノが登場した。今回はなんと“ニセ政府”。それも人口が軽く100万人を超える河南省鄧州市でだ。そんな大規模な市にもかかわらず、メンバーは僅か3人。規模に対するリソースの少なさにのけぞる。おまけにそのうち2人は女性だという。もちろんこのニセ政府は誕生から僅か数カ月で終りを迎えた。このアナーキーかつゆるーい“ニセ政府”になにが起きたのか?

昨年9月に河南省鄧州市で新政府が誕生した。勝手に現政府の解散を宣告し、市在住の農民である張海新、馬香蘭、王良双が現政府の横にある古城広場の向かいで新政府樹立を宣言したのだ。新政府は自分たちが住む3つの郷鎮(日本でいう町村に当たる)政府をまとめ、張が市政府と鎮政府1つ、馬、孔が残り2つの鎮政府を担当することになった。
事の発端は、鎮で進んでいた開発プロジェクトの用地が馬、王の一族の利益に関わってきたためとされている。だが、この私利私欲に塗れた悪だくみはあっけなく終わる。この政府から「市人民政府工事停止通知書」と「鎮政府違法建築処罰通知書」を受け取った不動産開発業者が不審に思い、本物の市政府に確認したことで逮捕に到ったからだ。

市公安局の捜査で、3人の自宅から市内のはんこ屋で偽造させた「市人民政府印」「市検察院印」「郷人民政府印」「郷人民政府財務専用章印」などが押収された。中には市人民政府名義の任命公文書や布告もあったようだ。また周辺住民200戸以上が新政府で農村土地請負経営権証書の申請をしていたが、今回の逮捕まで気がつかなかったというから、のんきなものだ。
3人は更に中央の9部、委(それぞれ省、庁に相当)名義で馬、王の2人に同地の発展の中心メンバーとなるよう求めた公文書を作成し、「我々の所で建設を申請しないものはすべて違法」と公布していた。
またこのニセ政府は職員募集も行なっており、大学生10人ほどが実際に履歴書を「第二市人民政府弁公室」に送付してきたという。

さて、国家反逆罪並のスケールを持つ今回のニセ政府騒動だが、顛末は信じらないほど軽いものだった。なんと「国家機関公文書偽造罪」のみで、主犯格とされた張が懲役2年。馬が懲役10カ月、王が懲役8カ月という量刑。検察官は3人を「法盲」と認定した。つまり思想を持って新政府を樹立したわけではなく、無知によるもの、法律に暗く小卒という点で、刑が軽くなった訳だ。

次はいったいどんなニセモノが出てくるのか? 中国の想像を超えたその力に期待したい。

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