アダルト雑誌の編集者をしている文月くんは、一カ月ほど前グラビアでちょっと使ったモデルのジュラちゃんと、先日ある路地裏で声をかけられてホテルに行ってしまった立ちんぼが、単に似た女なのか同一人物なのか、今一つ確信は持てずにいた。

そして、どちらの女にまた会いたいのかもわからなかった。

モデル事務所に問い合わせたら、ジュラちゃんは辞めていた。もちろん事務所は、辞めた子の行き先など知らない。ろくでもない女だった、とだけいわれた。

何度もあの路地裏に行ってみたが、あの日の女にも会えずにいた。そこいらを縄張りにしている立ちんぼの女達に聞いても、知らないという。
その話を聞いているうちに、私も昔その路地裏で妙な女を見ていたのを思い出した。もちろん私は、その女とホテルに入った訳ではない。

寒い季節なのにタンクトップにミニスカ、今の季節のような格好をしていた。浅黒い肌は健康的な日焼けではなく、内臓が悪いせいだろう。ばさばさの黒髪を胸まで垂らし、化粧っ気のない頬は荒れていた。そして腹が、出産間近のふくらみ方をしていた。

腹にもぎょっとさせられたが、むき出しの腕や胸元、腿などに、無数のヤケド痕があった。あきらかに煙草を押しつけたものだ。自傷行為なのか、誰かにやられたのか。

ともあれ、あまりにも痛々しい上に怖いので、彼女は誰にも声をかけられずふてくされて煙草を吸っていた。私もなんだかいたたまれない気持ちになり、酔いも醒めてその路地を出た。以来、あまりその路地裏に近づかなくなった。

これまた何の確証も持てないが、その女とジュラちゃんと文月くんがホテルに行った女は、同一人物ではないかという気がした。


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