子どもの頃、特に優れたものや目立つものはない、でも注目されたいとなると、元手もかからず努力もいらない方法は三つほどあった。不良になる。病弱を装う。そして霊感があるふりをする。けれど、それらはどれもやりすぎると怖い結果を招く。
というのを身をもって経験した彼女は、話の続きをしてくれた。

「転校した先の学校にも、L美っていうそんな子がいたんです。特に可愛くないけど体だけ変に発育がよくて色気のある子でした。もう処女じゃないって自慢してましたよ。

今でもはっきり、あのときの情景は覚えていますよ。

まだ夏休みの余韻が残る頃。放課後の教室で何人か集まっていたとき、L美は自分がどれだけ霊感が強いか自慢しました。
その怖い話はすべて、当時の怪奇漫画や心霊特集の番組からパクッたものでした。

そのとき、ちょうど地元である事件が話題になってました。男が片想いしていた女を乱暴して殺して、逃亡してたんです。
L美は調子に乗って、『その男ももう死んでいる。山で首をつっているのが見える』
なんていいました。するとそれまで黙って話を聞いていたJ子という、とても大人しくて目立たず、でも目立ちたいとも思ってなかった子が突然、強い口調で遮りました。

『その男、今はまだ生きて隠れてる。明日死ぬ。自殺する。でも首つりじゃない』
みんな、しーんとなりました。L美は真っ赤になって、J子を変な子! 嘘つき! なんて責めた。普段は大人しいJ子なのに、まったくひるまなかった。

翌日。本当にその犯人は、駐車場で投身自殺をしたとのニュースが流れました。でも昨日教室にいた子は誰も学校で、J子が霊視していた、当てた、とは口にしなかったんです。
L美も、当のJ子も。これはしゃべってはいけない、という雰囲気になったから。


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