アメリカで30年の実績、頭蓋電気刺激療法って何?

脳に電流を流せば不眠なんて一発で解消する――そんな、眉つばもの!?のウワサを聞きつけた、快眠女王ヒサコ。なにはさておき真偽を確かめにいかねば! 駆けつけた先は、都立駒込病院・脳神経外科医、篠浦伸禎先生のもと。あ、あの……先生って、手術中に患者本人と会話しながら脳腫瘍を取るという、あの覚醒下手術で有名な先生、ですよね? 先生がウワサの発信源なんですか?


篠浦伸禎/しのうら・のぶさだ
1958年生まれ。医学博士。東京大学医学部卒。富士脳障害研究所、東大医学部付属病院、国立国際医療センター、シンシナティ大学分子生物学部留学を経て、2000年より都立駒込病院脳神経外科部長。脳の覚醒下手術でトップクラスの実績を誇る。著著に、『脳にいい5つの習慣』『脳は論語が好きだった』『人に向かわず天に向かえ』『脳と瞑想』など著書多数。


「そうそう、脳に電流を通す頭蓋電気刺激療法(CES)というんです。これが、その『アルファ‐スティム』です」

篠浦先生が棚から取り出したのは、小さなプラスチックケース。
アルファ‐スティム
これがウワサの『アルファ‐スティム』。


中には、片手に載るほどのスマホのような機器。こんな頼りなげな小さなもので、どうやるんですか?

「やってみましょうか? この電極のクリップを両方の耳たぶにはさんで……、スイッチを入れます。電流の強さは段階的になっていますが、わずか1ミリアンペア以下の低レベル。私はわりと低めで2と3の間くらいのレベルですかね」
けいそくき せんせい2

『アルファ‐スティム』を使ってみせてくれた篠浦先生。本体は、ポケットなどに掛けられるので、いつでもどこでも手軽にできる。



篠浦先生、目をつむって気持ちよさそう。
「うん、やっぱりいい感じですねぇ、リラックスしますよ。……やってみますか?」

脳に電流なんて、ちょっと怖いような……。でも、先生が平気でやっているのだから、ものは試し。眠りの女王ヒサコもトライ♪ 耳たぶに電極をつけて、レベルを上げていく。すると、めまいのような、ふらふらとした感じが。あ、なんか、ちょっと気持ち悪い……。

「それは上げ過ぎですね。気持ち悪くなる手前のレベルでいってください」

というわけで、私は「レベル2」。篠浦先生よりも少し低めでスタート。

うっすら、ふわ~……、うっすら、くら~……。めまいの一歩手前のような、または震度1か2の地震?といった、ほんのわずかなふらつきを感じながら、しばし……。ふーん、なるほど。これをどのくらい行うのですか。

「不眠には1回20分。それだけで、うつからくる不眠でも4週間続ければ改善するというデータが出ています」

ほんとに!? たった20分、痛くもかゆくもなくて、こんなんでホントに効くんですか!?
疑い深い眠りの女王ヒサコに、篠浦先生が見せてくれたのは、『米国ストレス研究所』の数々の研究報告。

『アルファ‐スティム』で治療すると、不眠症の軍人の81%、一般人の84%に効果! 薬の効果56~68%と比べると、驚くべき改善率です。さらに不安やPTSD、うつ、痛みなどにも、高い改善効果が出ています。

「こうしたデータは、患者にどちらが本物かを知らせずに行う『二重盲検法』や、複数の論文を統合して分析する『メタ分析』を用いています。科学的に信頼性が高いものです」

でも、なぜ不眠や不安、うつ、PTSD、痛みなどに幅広く効くのでしょう?

「メカニズムはまだ仮説段階ですが、不眠やうつ、痛みを引き起こす脳の経路や作用を、特殊な波形の電流を流すことで抑制する、回路を断つ、消去する、ということのようです」

『アルファ‐スティム』を使ったあとは、アルファ波が増加するというデータもあります。多幸感をもたらすβエンドルフィンや、生体リズムや睡眠に大きく関与しているセロトニンなどの化学物質が、血液や脳脊髄液中で増大するという結果も出されています。

ユタ州オースティン医学生など、多くの体験者から、「幸福感」「身体のリラックス感」「より注意深くなる」「若さを感じた」「よりエネルギッシュになった」という報告も。

なんだか夢の治療器といえそうですが、でも、まったくリスクがない、ということはないんじゃないですか? となおも疑う、眠りの女王ヒサコ。

「不眠やうつの薬は、いまさまざまな危険性が指摘されていますが、アルファ-スティムには、ほとんど副作用はありません」

報告されている悪影響は、頭痛が0.1%の9件、皮膚刺激が0.07%の6件(1万556人中8792人が積極的な治療を受けた144の検証)。いずれも軽度で自然治癒したとのこと。

また、2007年から2011年の5年間の販売台数は58,030台で、個人ユーザー1,982,520人、開業医では6,266,400人に治療が行われ、こうしたなかからの調査では、電極部位の皮膚刺激11件、耳鳴り2件、パニック発作1件の合計14件。これもすべて軽度で自然治癒したそうです。パニック発作については、治療をあまりに早く止められた場合に起こったもので、きちんと行うことで解決する問題だそうです。

『アルファ‐スティム』は、家庭用医療機器として日本の厚生労働省も認可。こうなると、日本の不眠の民も、一刻も早く試してみたくなって当然。しかし、まだ啓蒙・普及活動は始まったばかり。ごく一部の医療機関、鍼灸治療院などで行われているだけです。近くにそうした施設がないか、また販売時期、価格などについては、篠浦先生が研究アドバイザーを務める、下記に問い合わせを。
★一般社団法人 米国ストレス研究所日本支部http://www.stress-j.com/

さて、取材を終え、電車で帰宅した眠りの女王ヒサコ。車中でふと目を開けると胸元にヨダレがツツー……きゃっ、恥ずかしい、いつの間にか、眠っちゃったんだわっ。これって、『アルファ‐スティム』効果かも~!?
(取材・文/眠りの女王ヒサコ)

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