「熱狂度は変わらないものがあるけど、客層があの当時とは明らかに違う……」
先日、後楽園ホールに新日本プロレスを観に行って、まず思ったことがそれだった。
筆者は四十代前半で小学生時代を(自称)プロレス小僧として過ごした。しかも新日派だった。キッカケは初代タイガーマスクの活躍であり、燃える闘魂・アントニオ猪木の強さに憧れた。毎週金曜日夜8時はテレビの前で正座状態で1時間を過ごしたものである。もちろん、会場にも足を運んだ。後楽園ホールはもちろん、国技館……といっても現在の両国ではなく蔵前国技館だが……。
しかし、初代タイガーマスクが引退した頃(83年夏)からプロレス熱は徐々にトーンダウン。1990年代までは辛うじて見ている感じで、21世紀に突入してからのプロレスは知らなかったりする。だって、K−1や総合格闘技のほうが面白くね? という感じでプロレスから離れてしまった。最後に知人の付き合いで見た新日本プロレスの会場はガラガラだったが……。
で、先日のこと。「プレミアムチケットが手に入った」と同僚に誘われた試合が新日本プロレスの後楽園大会だと分かって、これまでの経緯もあり、驚いた次第なのである。で、もっと驚いたのは、昔の会場にありがちだったオッサン臭は一切ナシ。若い女性を中心にカップルが多いのには面食らった。だって、デートでプロレス観戦ってことでしょ? 信じられん!
誘ってくれた知人いわく、このような状況になったのは、ここ2年ほどとのこと。この2年で、新日本プロレスになにがあったのか? まず、オカダ・カズチカや棚橋弘至、中邑真輔といった女性ウケするような、いわゆるイケメンレスラーが多くなったこと。ひと昔前の、黒パンツ一丁のいかにも男くさいレスラーは、ほとんどいないようだ。


選手のコスチュームもかつてとだいぶ変わった


もちろん、イケメンレスラーが多くなっただけで、観客動員が増えるハズもない。実は2年前に人気のカードゲーム会社がオーナー会社になった。そして、その会社が行ったのは『広告費の増大』。たとえば、夏の大きな大会に合わせてテレビ・雑誌広告を増やしただけではなく、ラッピング電車を走らせたりと、それまでになかった手法を取り入れた。これによって、プロレスを知らない層に「もしかしてプロレス、キテる?」と思わせる“流行っている感”を打ち出し、新規ファンを獲得したのだ。
そして、レスラーのマスコミ露出を増やし、他業種とのコラボにも積極的に乗り出した。それが如実に表れたのがグッズだろう。たとえばTシャツは“普段着として”着る事ができるデザインにしたり、キン肉マンといった昭和ファン世代にもわかるようなキャラとのコラボも実現。新しいファンの獲得と同時に、古くからのファンも大切にするという姿勢を見せた結果が今の新日本プロレスなのだろう。


リングの上では棚橋、オカダ、中邑といった顔ぶれだけではなく、“天コジ”こと天山広吉・小島聡、獣神サンダーライガーといった、これまでに団体を支えてきたベテラン選手も活躍しているのが、その証だ。
さらに、ニコニコ動画などの配信ツールを多角化することで、“新日本プロレスを観る人”も増加させた。その結果、新日本プロレスは売上を22億円と、2年間で2倍増にした。
もちろん、オーナー会社の財力、努力もあるが、必死に闘うレスラーたちの結晶だといっても過言ではないだろう。

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