日本のシンボル富士山が糞尿まみれになっている?

2013年6月22日、ユネスコ(国連科学教育文化機関)が富士山を世界文化遺産に認定した。これには、日本人はみんな喜んだに違いない。

富士山は日本人にとって特別な存在であり、古の時代から富士信仰が行われた霊峰である。芸術的にも価値は非常に高く、古くは万葉集にも描かれ、山部赤人が歌を詠んだ。江戸時代には葛飾北斎が『富嶽三十六景』で描き、近代には夏目漱石が『三四郎』の中で記している。

静岡に住み、富士山を見慣れた記者も、富士山の壮大な姿に畏敬の念を抱かずにはいられない。しかし! 信じられない話だが、その富士山が糞尿にまみれているというのだ。

事の発端はこうである。夏にしか一般入山が許可されていないため、夏シーズンが終わった9月14日に県が登山道を調査したところ、須走口5合目から6合目の至るところで、排泄物を発見。それは17カ所にも及んでいた。

排泄物を回収した静岡県庁自然保護課によると、富士山は通年で気温が低いため、排泄物が分解されにくく、そのまま残ってしまう可能性が高いという。また、分解されても養分となり、植物が育ってしまうため、緑化が進み、山の景観を損なうらしい。

須走口には、登山者が歩く間隔の30分から1時間おきにトイレが設置してあるが、山小屋の裏や登山道で用を足す者が後を絶たないと問題視されている。県では、景観を損なうため、トイレの増設などは考えておらず、登山者のモラルに訴えかけるしかないとしている。

昨今、健康志向も高まり、「山ガール」という言葉ができるほど、男性だけでなく女性にも登山は人気が高い。人気が上がるにつれ、登山者のマナー問題も出てきている。

富士山は日本人にとって聖地であり、様々な問題は人気が高いから起こり得るともいえる。もちろん、大部分の登山愛好家はマナーをしっかり守って登山を楽しんでいるが、一部の心ない登山者によって、この聖域が侵されているのが現状だ。

日本人の誇りであるこの場所を守り、次世代へ残すために、もう一度みんなが自然との共生について再考する必要があるのではないだろうか。

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