それは秋のまっただ中の頃で、この季節になるとそれを思い出してしまうと、女優の秋子は恥ずかしそうにではなく恐ろしそうに話してくれた。

ドラマのために行った地方のホテルで、突然ものすごい性欲が湧いてきて苦しんだと。

「普段の私はエロな欲望が芽生えても、それってとろ~んとしているっていうか、もやもやしているっていうか、何にしてもそれ自体が甘い快感なんですよ。ところがそのときのは凶悪で狂暴な衝動で、責苦や苦痛に近いものでした。あんな性欲
をいつも持つ人って、どんだけやっても満たされないだろうなと思いますよ」

耐えきれなくなった秋子はついに、昼間の撮影でラブシーンを演じた相手役の俳優に電話してしまった。
もともと何の感情もなく、ただの共演者でしかなかった男だ。

しかし俳優の彼は秋子にわりと好意を持っていたようで、すぐ部屋に来てくれた上、あっという間にベッドに入ってしまった。

「決して彼がヘタとか乱暴とか、そんなんじゃないですよ。でも、なんというか激しく飢えているときに米を一粒だけ口に入れてもらったというか、お腹は満たされずに余計に自分の飢えをひしひしと感じてしまったんです」

あまりにも彼女がしつこくもっともっととねだるので、俳優は何か恐怖を感じたらしい。
みんなに見つかったらやばいからと、早々に自分の部屋に戻っていった。

肌寒かったけれど、冷水のシャワーを浴びたらどうにかその異様な性欲は薄れた。
しかし恐ろしいので、普段はあまり飲まない酒を飲んで寝た。

すると夢の中に見知らぬ男が出てきて、秋子はその男と性的な交渉をもってしまった。
これまた、猛烈に生々しく生臭い夢だった。


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