「卒婚」宣言した 『人間力』  清水アキラ(タレント)の画像
「卒婚」宣言した 『人間力』  清水アキラ(タレント)の画像

ぼくの実家が長野にあるんだけどね。女房が"そこに行くと疲れる"って言いだしたんだよ。確かに、おれも長野の実家に帰ると疲れるな~と思っていたんだけど……。

でも、最近その理由がようやく判明したんだ。家が広すぎたんだな。
いわゆる11LDKで、家の端から端まで歩くと、けっこうな距離があるんだよ。それで、女房が疲れちゃうって言うもんだから"卒婚"した。

卒婚って俺が言った瞬間から、女房のとこにどんどん電話がきてさ。
「離婚なの?」って。「めぐみちゃん、私から清水くんに言ってあげる」とか「手紙書く」とか。で、女房が「もうお父さん、面倒臭い。いちいち説明しなきゃなんない」って(笑)。

俺の友達もさ、「お前、卒婚宣言して、また女遊びでもしようとしてるんじゃないのか」って聞くわけよ。
今更そんなことするより、女房といかに楽しく、どうやって二人の関係を長続きさせ、一緒に幸せになるかっていうことだったんだ。

だから別れない。結婚生活を卒業するって意味で、決して離婚じゃないんだ。

今まで、二人は一艘の船に乗って、幸せっていう道を進んできたけれど、船が1個じゃなくてもいいじゃないか、二つの船に分かれて、同じところに行こうよ、っていう意味合いだったんだ。

そもそも、卒婚を言い出したのは、女房の仕事を楽にしようと思ったからなんだよ。俺が実家に行きたい時に、女房が「あたしは、行きたくないんだけど」ってなると、「夫婦なのに、そういう訳にはいかねえだろう」って話が変わるんだよ。「じゃあ、卒婚にしよう」
ってことで、それぞれ自由に行動できるようになったんだ。

だから女房は、卒婚に賛成だよ。
ただ、卒婚っていう言葉が、あまりにもショッキングだったんで、みんな驚いたんだな。
離婚なんてことは、絶対にあり得ないね。今でも女房のことは愛しているもん。彼女が、ふとした瞬間に見せる表情に、ドキッとすることは還暦になった今も何度もあるよ。
男と女ってのは学生のときに勉強した平行線なんだよ。どこまでいっても交わらない。だから、お互いを知ろうとするし、追い求めていけるんだ。それが愛なんじゃないの? いま思いついたけど(笑)。

女房との馴れ初め? 出会ったのは、まだ20代のときで、マイアミだったな。遠い異国の地で、出会うなんてロマンチックだろ? でも、残念ながら、六本木にある喫茶店のマイアミなんだ。

一目見た瞬間に、"あっおれはこいつと結婚する"って思ったね。当時、女房には、ほかにつきあっている人がいたんだけど、そんなの関係なかった。いまでいう、ストーカーのように、しつこくアプローチし続けたよ。
そうやって、念願かなって一緒になることができたんだもん。簡単に手放すつもりはない。
それに女房には苦労もかけたからね。まったくテレビに出られない時代には散々迷惑をかけた。

そんな時期、清水國明に、「俺もう、何にもないんだ」と愚痴ったんだ。すると、「もっと一生懸命考えろ、何かあるはずだ、って言われてね。毎日毎日考えていると、そこにセロテープがあるんだよね。
で、セロテープをビリっと破いて、鼻につけて。ああ、こういう人いるよなあ。で、目を細め眉を上げたらこうやったらアレ、研ナオコさんに似てるなって。じゃあってんで、目と鼻を下ろしたら、井上陽水になったり、春日八郎になったりでね。芸が完成した時は、それは嬉しかったよ。それからもう、次の日に、『ものまね王座決定戦』があるなんていったらワクワクして眠れなかったね、うん。

不遇の時にはね、大きな波が来た時に、乗れるように練習しなきゃダメなんだと思ったね。富士山を登っている人を見て、あー俺も登れるよ、と思っているだけじゃダメなんだ。やんなきゃね。

タモリの『笑っていいとも!』に出られない時にさあ、自分が出たらどういう風になるんだろうっていうのをやるわけだよ。うん。それをビデオに撮っといて、さらに研究するんだ。俳優も出来るかなと思ったら、台詞を自分で書いて覚えるんだ。頼まれてないけどやるの。やってれば、何か波が来た時に、もしかしたら乗れるかもしれない。

乗る準備もしてないで、出来るとかやれるとか、思ってる自分っていうのは、本当に小さなもの。やってみないとダメ。やってみないと、先がないんだ。


撮影/弦巻 勝


清水アキラ しみずあきら

1954年6月29日長野県生まれ。ものまねタレント、お笑いタレントとして活躍中。大学在学中に『ギンザNOW!』に出演し、芸能界入りし、「ザ・ハンダース」の一員になる。解散後は、「あのねのね」の清水國明に弟子入り。研ナオコの物まねでブレイク。以降、トップクラスの実力を誇るものまねタレントで、『ものまね王座決定戦』では最多の5回優勝しており、『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』では数回、大トリを務めている。特技はスキー。国体選手だったこともある程の腕前。趣味にも才能を発揮し、油絵では個展を開く。三人の息子の父親。『卒婚~新しい愛のかたち~』(清水アキラ著/双葉社刊)は現在発売中。

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