田舎で芸能人を夢見ていた頃も、東京で頑張っていた下積み時代も、人気タレントになった今も、秋絵は日記をつけ続けているそうだ。
「私と運命がすれ違った、入れ替わったに違いないミリア。彼女のことも、当時の日記帳を開いたら詳しく書いてあるわ。ストリッパーを続けていたら殺されずにすんだのかな、それとも別の男のに殺されたのかな、なんて書いた覚えがある」
SM嬢になったミリアが客に殺されたと推定される日、秋絵は寝ていたら突然に猛烈に喉が痛くなり息がつまり、死ぬ恐怖に慄いたと書いていた。
そのときは、悪い夢を見たと無理矢理に自分を納得させたという。
それからしばらく、鬱蒼とした森か山の中に捨てられた自分が、どんどん腐って骨になっていく夢を見続けた。
後からわかったが、殺されて衣服をはぎ取られて全裸にされたミリアは、樹海に獣かゴミのように捨てられていたのだ。
ミリアが発見されて事件が発覚したときから、悪夢は見なくなったそうだ。
「私が風俗嬢になって客に殺されて、ミリアがタレントになっていたかもしれない。そっちが本来の二人だったんじゃないかな。なんで運命が入れ替わったかはわからないけど、こんなことは私だけでなく他の人達にもあるはずよ」
調べようとすれば、ミリアの墓や実家などもわかるだろう。
けれど秋絵は、そこまではしない。
遺族に会ったり墓参りをしたりすれば、もっと強く結びついてしまい、また何かが入れ替わってしまうのを恐れている。
殺した男は無期懲役となり、二十数年経った今もまだ服役中ではないだろうか。
秋絵は、彼に対しては何の感情もわかないという。
※この物語はフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。
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