今年の流行語大賞のトップ10にもなった「レジェンド」。42歳で活躍中のスキージャンプ・葛西紀明でおなじみの言葉だ。

葛西選手は地元札幌が2026年冬季五輪招致を表明したことを受けて「札幌なら出たい。五輪出場10回になるし」と54歳までの現役続行希望を宣言した。

プロレス界も負けてない。私は今週「東京愚連隊」と「宇宙大戦争」を観戦しに連日水道橋に出かけたのだが、前者の興行はミル・マスカラスとテリー・ファンクの2人がタッグを組んでファンを熱狂させた。

ミル・マスカラス72歳、テリー・ファンク70歳。なんというレジェンド!

この日のメインカードは「ミル・マスカラス/テリー・ファンク/船木誠勝vsNOSAWA論外/藤原善明/カズ・ハヤシ」の6人タッグマッチ。

プロレスは記録より記憶のジャンル。72歳だろうが70歳だろうが、リングに上がってくれただけでファンは嬉しくなる。こういう場合、時間と空間を超えるために観客はチケットを買っている。

その証拠にマスカラスとテリーが順番に入場するときの花道への観客の殺到ぶりがすごかった。まさに浮き足立って大混雑。私の周囲の席では「以前はこういう風景が普通だったなぁ」「ひと足早いお正月だ」と方々から弾んだ声が聞こえた。

今でも後楽園ホールに来ているファンだからこそ「チビッ子ファン」に戻ってしまったのだと思う。花道に群がる元チビッ子たちはスーツ姿も多かった。

かくいう私もマスカラスのテーマ曲「スカイハイ」、テリー・ファンクのテーマ「スピニング・トーホールド」がかかった瞬間、自分でも驚くほどだらしない笑顔になった。プロレスファンに危険ドラッグはいらない。子どもの頃から聞いているレスラーのテーマがかかればいつでもご機嫌になれる。体に染みついている。

試合後もリング上のレジェンドに握手を求めようとリングサイドに押し寄せる元チビッ子たち。この騒然とした活気、無条件にウキウキ。

あと嬉しかったのは相手チームに藤原善明(65歳)がいたこと。私は後楽園ホールでは、コーナーで控えている藤原善明の後ろ姿だけを見ているのが好きだ。体がデカく、手足がすらっと長い(アンデウソン・シウバにも負けてないと思う)。それも含めた「たたずまい」が最高なのだ。藤原の後ろ姿だけを見ていてもお釣りがくる。

それにしても、藤原善明と船木誠勝が組み合う姿をコーナーで見守るマスカラス&テリーという図は、ドラえもんで言うなら「タイムマシン」というより「もしもボックス」的な世界であった。プロレスはたまにドラえもんに負けない世界が飛び出してくる瞬間がある。

来年もまたレジェンド達に会えますように。

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