突然ですが、自分の体内から皮膚を破って得体の知れない生物が出てきたらどうしますか? まぁ、驚くでしょう。そして、そんな生物がアナタの体内に滞在していたら……ゾッとしますよね?
先日、オーストラリアに在住する男性が、足首より下の違和感と腫れが気になり来院。そして、治療のためにレントゲンを撮ってみたところ、腫れていた足にミミズのような物の影が! 体内に寄生生物が潜んでいるのがわかったのだ。

ちなみに、その男性は4年前にスーダンからオーストラリアに移住してきた……ということで診察した医師はピンときたのだろう。「ギニアワームだな」と……。
ギニアワーム……日本ではメジナ虫と呼ばれている寄生蠕虫で、成虫はヒトの皮下に寄生する。雄は体長3〜4センチと短いが雌は70〜120センチとかなり長くなり、体内で栄養を吸収してジワジワ筋肉や内臓を傷付けていく。そして成長すると、産卵するために皮膚を破って出てくるという、恐ろしい虫なのだ。幸いにも男性の場合はすでに体内で死亡していて、除去手術によって無事に体調を戻したという。

ちなみにギニアワームの体内への寄生方法は、ケンミジンコという生物を介して行われる。そのため被害が起きるのは、主に水道などの環境が整っていない農村地域。たとえば、生活用水を池や川から直接汲み取って飲んでいる地域の人々に多く、つい30年ほど前までは、世界で数百万人が感染していたという。だがご安心あれ。それもかつての話で、ギニアワームは間もなく世界から根絶されようとしているのだ。

というのも、各地域でボランティア対策チームによる啓蒙活動が行われているからだ。彼らは監視役を務めるだけではなく、水くみ場で住民に水をろ過するためのフィルターを配ったり、子供たちには絵本を使って指導するなどして根絶を目指してきた。
その結果、ギニアワームは絶滅の途を辿っているが、紛争中に対策を怠ったり、社会の不安定化により、また再発する恐れもあるという。現在、症例の大半が、紛争が長く行われ、ようやく独立を果たした南スーダンで発見されているのもそれが理由だ。
なかなか行く機会が少ない地域であるが、我々日本人が現地を訪れても飲料水には注意すること。こんな虫、お土産で持ち帰るなんて、まっぴらゴメンだし……。

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