「ロボットだから別れの日なんて来ないと思っていたのに……」
ペットと同じようにかわいがっていた我が子に訪れた「寿命」に落ち込んでいた飼い主たちに、新たな希望が生まれた。ソニーの公式サポートが終了したロボット犬・AIBOの修理を請け負う元エンジニア集団がテレビや新聞などで報道され、日本全国に感動の声が広がっているという。

1999年に発売が開始された「4足歩行型エンタテインメントロボットAIBO」は5世代までが発売され、日米欧で15万台以上を販売するという時代を代表するヒット商品となった。飼い主とのコミュニケーションによって、徐々にいろいろなことができるようになっていく本物の子犬のような姿が反響を呼び、AIBOたちは日本中の家庭にペットとして迎え入れられた。

だがペットとはいえ、相手は機械。実際の動物が病気やケガなどをするのと同じく、AIBOにも“故障”という不具合は生じる。
これまでは2006年にAIBOの生産が終了した後も「AIBOクリニック」という公式の修理窓口が存在したのだが、部品切れなどで徐々に修理不能な状態となるケースが増えていった。そして2014年3月、とうとうAIBOクリニックも閉鎖されてしまい、飼い主たちはAIBOが壊れて動かなくなるまでの、残された時間を楽しむより方法がなくなってしまったのだという。

と、そのような状況だったのだが、AIBOの修理を請け負っているという「ア・ファン」というビンテージ機器修理を専門に請け負う会社がいま脚光を浴びている。
ソニーで技術職として勤めていたベテランの元エンジニア集団たちが「ア・ファン」の中心スタッフ。なかにはAIBOの開発に関わった当時のスタッフに接触し、イチからAIBOを学んで修理ができるようにまでなったエンジニアまでいるというが、いずれのスタッフもみな還暦近いオヤジたち。

口コミを中心に彼らの技術力のウワサは広まり、現在では個人だけでなく公的機関からも依頼が舞い込むという。14年3月末、クリニックが閉じて修理依頼は殺到したというが、日本全国にAIBOの修理を諦めていた飼い主がそれほど多かったということにも驚かされる話である。

このエンジニアたちの勇姿はテレビなどでもたびたび報道され、その「我が子を思う」飼い主たちの期待に応え続けるオヤジたちの姿に、AIBOを知らなかったような若者世代から感動の声が広がっている。

老老介護の問題が話題となる、超高齢化社会に突入する日本の未来だが、老いたロボットたちをどう看取るか、このような形のさまざまな物語も待ち受けているに違いない。

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