女子プロレス団体のひとつ、スターダム。3年ほど前に何の知識もなく観戦したのですが、愛川ゆず季にさっそく驚いた。グラビアアイドルからの転身でキャリアが少ないのにこの完成度は何だ!? と。たとえば、攻められているときの表情のわかりやすさはジャイアント馬場のそれに似ていた。畑は違えど人に見られてきたプロの凄さを痛感したのです。

そんな愛川ゆず季は一昨年4月に引退。しかし今にして思えばスターダムの見どころはそこから始まったのかもしれない。それは他のレスラーの「成長過程を楽しむ」という見方だ。

以前NHKの朝ドラ「あまちゃん」をみていたとき「成長していく姿を見守るのが楽しい」という理由をアイドル好きから聞いてなるほどと思った。正直言うと私はそれまで若いアイドルにハマっているおっさんには疑心暗鬼だったのですが、そういう見方があるのかと納得したのです。反省したのです。それ以来、日本ハムの大谷翔平の二刀流チャレンジだって「今しか見れない大谷」だと思い、貴重に思うようになった。

考えてみれば後楽園ホールのお客さんもそうではないか? スターダムを観たのは数か月ぶりだったが、その少しの期間に各選手がしっかり成長していて感心してしまった。

メインを務めた世Ⅳ虎は大成長。コグマ、安川惡斗、岩谷麻優、クリス・ウルフも目立った。その彼女らを叱咤激励しつつ傍らにいるのが実力者の高橋奈苗や木村響子。こういう高い壁がいてくれるから観客も安心できる。

愛川ゆず季引退以降、エースとして頑張ってきた紫雷イオはリング上はもちろんだが、この日はマイクアピールも堂々としていてよかった。まるで棚橋弘至のようだな、と思っていたら今週の「週刊プロレス」の対談で直接アドバイスをもらっていた。キャラの成長過程を見るのも面白い。

私は愛川ゆず季がいたときはその完成度の高さを見ていたが、今のスターダムには成長過程を見るという正反対の見方であることに気がついた。こちらには解放感がある。

よく「プロレスはプロセス」というが、それは試合内容だけではなく、レスラーの人生そのものを見つめることでもあることを再確認した日曜の昼下がりでした。 

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