直接的なストーカー被害はなかったが、如月と名乗る怖いファンに怖い目に遭わされた話をしてくれた美熟女タレント梅香は、しばらくして連絡し直してきた。

「実は私、二十年くらい前にも怖い変な男に脅かされ続けたんですよ」

ストーカーという言葉が、一般的に使われるようになった頃と重なる。

「あの頃はまだ学生で、芸能活動を始めたばかりでした。ある地方のロケ先で知り合った、ちょっと年下の人と仲良くなって。すぐに、そういう仲になっちゃった。

あの頃はまだパソコンは一般的じゃなかったし、携帯も簡単なショートメールしか送れなかったけど、遠距離恋愛に励みましたよ。あの頃はそんなに男経験なかったけど、彼とはエッチの相性もすごく良くて、結婚を考えるほどになりました。

でも、長くは続かなかった。私の仕事が忙しくなったのもありますが、彼は他の女とも遊んでたんです。それを問い詰めると、暴力をふるうようにもなりました」

彼は勤めを辞め、梅香につきまとうようになる。梅香の財布から金を抜いたり、勝手に指輪や腕時計を売られたりした。梅香から別れを告げたら、完全にストーカー化した。

梅香は実家に戻り、彼が訪ねてきても親が追い返すようになった。すると彼は郵便受けにネズミの死骸を入れたり、庭に置いてある自転車を壊したりといった嫌がらせをしてきた。親も不眠症になるなど悩んだが、警察に注意してもらっても止まない。

塀に赤ペンキで大きく「死ね」と書かれたときは、弁護士も頼んで刑事告訴寸前まで行った。塀を塗り直す費用を出してもらって示談にし、そこでいったん嫌がらせは止んだ。

「まさかそいつが、のちの如月になった、なんてオチはないよね」

そう聞くと梅香は妙にきっぱり、100%それはないと首を横に振った。


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