「病院の処方薬はこんなに危ない!」と警鐘を鳴らすのは近藤誠がん研究所 所長の近藤誠氏だ。その他の専門家の意見を加えつつ、現代の医療のありかたに疑問を投げかける書籍『ダマされないための完全お薬ガイド2015』から、一部を抜粋してお届けする。

「頭が痛い」「熱が出た」「生理痛がひどい」「腰が痛い」といっては、薬をもらいに医師にかかる人が少なくありません。こんなとき、よく処方される薬に「ロキソニン(成分名・ロキソプロフェン)」や「ボルタレン(成分名・ジクロフェナク)」といった薬があります。飲み薬と塗り薬の両方があり、痛みにも熱にも効く薬です。

以前は、医療機関を受診しなければもらえない薬でしたが、数年前から市販薬として薬局で買えるようになり、テレビCMも流れるようになりました。ですので、名前に聞き覚えのある人も多いはずです(市販のボルタレンは外用薬のみ)。それだけ身近に使えるようになったわけですが、実は下手をすると、かえって痛みを誘発する、注意の必要な危険な薬なのです。

ロキソニンやボルタレンは「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(エヌセイズ)」と呼ばれる種類の薬で、炎症にともなって体内に放出される「プロスタグランジン」という痛み物質の合成を阻害することで効果を発揮します。
プロスタグランジンは痛みを誘発するだけでなく、さらなる炎症を引き起こし、体温を上げる作用もあります。ですので、これを阻害すれば痛みだけでなく、熱も炎症も抑えられる。一石「二鳥」にも「三鳥」にもなる薬なので、医師にも患者にも重宝されるのです。
しかし、プロスタグランジンにはもうひとつ、大切な役割があります。それは、胃粘膜を保護する作用です。そのため、これらの薬を飲むと胃粘膜の働きが弱くなって、胃酸の作用から胃を守れなくなってしまいます。つまり、たくさん使いすぎると、「痛み止めの薬で、胃が痛くなる」という、とても皮肉な事態に陥るわけです。
胃が空っぽのときや、胃の調子が悪いときに、これらの薬を飲むのはよくありません。場合によっては胃潰瘍を引き起こしてしまいます。「頭痛がなおらない」「熱が下がらない」からといって、こうした薬を安易に飲み続けると、逆に大変なことになってしまうかもしれないのです。

痛み止めには、もうひとつ注意すべき点があります。それは、頭痛薬で頭痛が悪化してしまう「薬物乱用頭痛」です。特に、脈拍に合わせて頭がズキンズキンと痛む片頭痛の人は薬物乱用頭痛になりやすいので要注意です。片頭痛は、拡張した血管が脳の神経(三叉神経)を圧迫することで起こると考えられています。そこで片頭痛には、この血管の拡張を抑える「トリプタン製剤」と呼ばれる痛み止めがよく使われます。

しかし、トリプタン製剤をはじめとする痛み止めを使いすぎると、体はちょっとした痛みにも過敏に反応するようになり、より強く痛みを感じるようになってしまうのです。この結果、痛みを抑えようと、さらに薬に頼ってしまう悪循環に陥ります。1ヵ月に15日以上頭痛があり、定期的に1ヵ月10日以上痛み止めを飲んでいると、薬物乱用頭痛と診断されます。


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『病院の処方薬はこんなに危ない! ダマされないための完全お薬ガイド2015』(EDGE編集部/双葉社)

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