「病院の処方薬はこんなに危ない!」と警鐘を鳴らすのは近藤誠がん研究所 所長の近藤誠氏だ。その他の専門家の意見を加えつつ、現代の医療のありかたに疑問を投げかける書籍『ダマされないための完全お薬ガイド2015』から、一部を抜粋してお届けする。

高齢社会になり、注目されるようになった病気のひとつが「骨粗しょう症」です。日本では1996年に診断基準が作成された、比較的新しい病気です。

私たちの骨は、骨芽細胞によって骨形成されると同時に破骨細胞によって骨吸収され、常に新しくつくり直されています。この新陳代謝のことを「リモデリング」といいますが、加齢などによって骨吸収が上回ると骨量が減少し、その結果骨がもろくなって、骨折しやすくなります。この状態を骨粗しょう症といいます。「骨粗鬆(しょう)症の予防と治療ガイドライン」(2011年 骨粗鬆(しょう)症の予防と治療ガイドライン作成委員会編)によると、日本の患者数は推計1300万人。特に女性は、閉経後に骨粗しょう症になりやすく、患者の8割を占めるともいわれています。

骨粗しょう症になった高齢者が、転倒して大腿骨近位部(脚のつけ根)を骨折すると、それがきっかけで寝たきりになることもあります。実際、厚生労働省が行った「平成25年国民生活基礎調査」では、介護が必要になった主な原因として「骨折・転倒」が11.8%を占めていました。

骨粗しょう症と診断された場合、薬での治療が中心となります。しかし、その薬によって、逆に骨が破壊される可能性があることをご存じでしょうか。
骨粗しょう症の薬にはいくつかの種類がありますが、代表的な治療薬といえば「ビスホスホネート系製剤」です。飲み薬では「ボナロン」、「フォサマック」、「アクトネル」、「ベネット」、「リカルボン」、注射薬では「ゾメタ」、「アレディア」、「ランマーク」などの一般名があります。

ビスホスホネートはもともと水道管の水垢取りに用いられていましたが、1960年代に骨吸収を抑制する作用があることがわかり、現在は骨粗しょう症治療薬の第一選択薬になっています。また、悪性腫瘍の骨転移の抑制やステロイド療法の副作用防止などの目的でも、ビスホスホネート系製剤が頻繁に使用されています。

しかしその一方で、ビスホスホネートによる「顎骨壊死(がっこつえし)」の報告があるのです。
顎骨壊死とは、あごの骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になることです。あごの骨が腐ると、口のなかに元々生息する細菌による感染が起こり、歯肉の痛み、腫れ、歯のぐらつき、しびれ、あごの骨がむき出しになる、抜歯後のなおりが悪いなどの症状が出ます。ではなぜ、ビスホスホネートによって骨の壊死が起こるのでしょうか。

腸から吸収されたビスホスホネートは、代謝されずに骨組織に届き、骨吸収を阻害します。そのさい、ビスホスホネートは病的な骨吸収を抑制するだけでなく、本来体にとって必要な骨吸収までも阻害してしまうため、組織障害や組織への血液供給不足を生じ、骨壊死が起こると考えられています。顎骨壊死が起こる確率は飲み薬で1万人に1~4人、注射薬で100人に1~2人程度といわれています。


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