「すごいピッチャーが現れました!」
4月5日。実況アナが絶叫する中、東京ドームのお立ち台に上がったのは、開幕2戦2勝を飾った巨人のドラフト3位ルーキー、右腕の高木勇人(はやと)投手(25)だった。夕刊紙記者が語る。
「プロ初登板となった3月29日のDeNA戦を、6回2失点の好投で初勝利。球団史上55年ぶりとなる、新人による開幕カードでの先発勝利という興奮の余韻も冷めやらぬ中、またも快挙を成し遂げたんです」

この日は、阪神打線に9回2死まで二塁を踏ませぬ快投で、2安打完封勝利。
開幕から7試合目でキャッチャーに復帰し、初バッテリーを組んだ主砲・阿部慎之助(36)の好リードも光ったが、
「巨人の新人が4月中に初完封をマークするのは、66年のドラフト制以降では初。チームにも今季初の連勝をもたらしました」

そんな注目の新人・高木だが、これまでは苦難の連続だった。ドラフト指名漏れは、三重・海星高校3年時から実に5度。"6度目の正直"でプロの扉をこじ開けた苦労人なのだ。スポーツ紙デスクが言う。
「7年間在籍した社会人野球の三菱重工名古屋では、中継ぎ起用が多く、制球難もあって、スカウト陣も指名を見送っていた。だが、昨年から制球重視にシフトチェンジ。球速は若干落ちたが、変化球が生きるようになった。他球団の東海地区スカウトは、今頃歯ぎしりしているでしょうね」

しかも、強心臓で我が道を行くタイプだという。
「阪神戦の7回2死フルカウントの場面で、阿部のサインに3度も首を振った。自信満々で、怖いもの知らず。実に投手向きです。この場面も、自分らしさを貫いて選んだカットボールで打ち取りました」
試合後、阿部も「強さ、速さ、あの天然ぶりも全部言うことない」と大絶賛。巨人番記者が言う。
「なかでも天然ぶりは最高。球速が130キロに落ちた高木に"大丈夫か?"とマウンドに駆け寄った阿部に、"あれ?"と、とぼけた返答。阿部も苦笑するしかなかったとか」

そもそも高木の天然と強心臓は、一部で伝説になるほど有名だった。
「宮崎キャンプでは、投球途中で、突然、靴ひもをゆっくり結び直すなど、落ち着きと度胸を感じました」
と番記者が振り返れば、前出のデスクも、
「プロ入り前ですが、うちの記者が"電話番号教えてください"と言ったら、"イタズラ電話してもいいですよ!"ですからね。どういうふうに返事すればいいか困ったそうです」

冒頭のヒーロー・インタビューの最後に、高木は次のように吠えた。
「僕は僕です! 次に向かって頑張ります」
新星の活躍に注目だ!

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