「自然と試合が恋しくなり、良い演技ができたときの達成感を味わいたいと思い始めました」
現役続行か引退か――昨年の5月以降、その去就を"ハーフハーフ"と表現していたフィギュアスケート元世界女王の浅田真央(24)が、5月18日に都内で記者会見を開き、現役続行を発表した。

「最近は、姉・舞(26)のタレント活動のほうが見る機会は多かったですが、一気に話題をさらいました」(夕刊紙記者)

この真央の決断についてスポーツライターの折山淑美(おりやまとしみ)さんは、「予想どおりだった」と分析し、こう続ける。
「彼女は純粋なアスリート。基本的に滑るのが好きなんですよ。ただ、2014年のソチ五輪までは、休みもなく競技生活を続けてきたので、精神的にもかなり疲れていた。この1年の休養でリフレッシュできたのではないでしょうか」

"銀盤の女王"の復帰宣言に胸をなで下ろしているのが、日本スケート連盟だ。
「ポスト浅田世代の若手が伸び悩んでおり、日本選手が表彰台に上るチャンスも少なくなっていますからね」(スポーツ紙記者)

あまり知られていないが、国際スケート連盟が承認するグランプリシリーズなどで表彰台に上った場合、獲得賞金の10%を連盟に納付することになっている。
「日本人スケーターとして最高額の賞金を得ている浅田がいるといないでは、連盟に入ってくる金額がかなり違ってきます」(同記者)

さらに連盟主催の大会でも、浅田が出るかどうかで集客力が大きく左右されるというのだ。
「真央ちゃんは現在、8社の企業とスポンサー契約を結んでいますが、そのCM契約料は1社当たり約4000万円。現在、年間3億円以上のCM収入があるんですが、このうちの20%が連盟に支払われているんです」(広告代理店関係者)

仮に、浅田が競技生活から引退すれば、これらの金も入ってこなくなる。
「"浅田バブル"の恩恵にあずかり、ソロバンをはじいてきた連盟としては、引退という選択肢だけは避けてほしかったんです」(スポーツ紙デスク)

そのうえ、連盟のソロバン勘定を脅かす勢力もあった。アスリートのマネージメントを手掛ける会社のIMGの存在だ。
「浅田も所属するIMGの本音は、逆に"早く引退してほしい"というもの」(同デスク)
浅田がプロに転向すれば、CM収入などはすべて、連盟ではなく、浅田とIMGの"取り分"となる。
「正直、IMGとしては、現役続行よりも、プロに転向してくれたほうが稼げる公算が高い。"引退興行"と銘打ったアイスショーで全国を回れば、超満員確実ですからね。ビジネスを最優先に考えれば、引退という選択肢もありえたかもしれません」(前同)

そんな葛藤に1年間悩みに悩んだ末、浅田は現役続行という道を選んだ。
「一般的に、フィギュアの競技者年齢は低い。10代後半から20代前半がピークと言われます。9月に25歳となる浅田が、今から2018年の平昌五輪に照準を合わせていくのは難しいと思います」(スポーツ紙記者)
と、その道は平坦ではないが、折山氏はこう語る。

「最近、アスリートの平均寿命は伸びていますから、年齢はあまり関係ないかもしれません。浅田のジャンプは完成したわけではなく、まだまだ"伸びしろ"があります。彼女を指導する佐藤信夫コーチも"やれる"と判断したからこそ、浅田を後押ししているのだと思います」

金メダルを目指し、イバラの道を歩む選択をした浅田の戦いと、彼女が生み出す金を巡る綱引きには、まだまだ終わりが見えない。

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