映画監督・園子温「男とのセックスを“実験”してみたことあります(笑)」~新しきに挑戦する人間力の画像
映画監督・園子温「男とのセックスを“実験”してみたことあります(笑)」~新しきに挑戦する人間力の画像

「映画って良くない意味で1作が重い。音楽を1曲つくるように、いい意味で軽い気持ちでいろんな映画をつくっていきたい」

今まで映画作品を何作もつくってきましたが、毎回毎回、何か新しいことを実験したいと、ずっと思いながらやってきました。
その気持ちは、仕事以外でも同じで、男とセックスしたことないなって思ったら、実際に挑戦してみたりしたこともありますよ。まぁ、それは途中で無理だと気がついて、断念したんですけど(笑)。

もう小さい頃から、そういった思いは、ごく自然に自分の中にありましたね。だから、小学生の時、"なんで服を着なきゃいけないんだろう?"と疑問に思って、"実験だ!"と、全裸で教室に行ったり(笑)。もちろん、教師からはこっぴどく怒られたので、"じゃあ、次はチ○チンだけ出してみよう"と、それでも注意されたら、"今度は授業中だけ出してみよう"という具合で、毎日のように教師には、殴られていました(笑)。

まぁ、特に深い意図はなかったんですけども、顔や、腕なんかは露出しているのに性器を露出したら、みんなが大騒ぎするのがおもしろかったんでしょうね。全部が、実験だったんです。

映画監督になってからも、とにかく"こんなの映画じゃない!"って言われるような、映画的な文法をすべてぶっ壊した物をつくりたいと思ってやってきたので、普通のいわゆる映画っていうものを撮ったことがなかったなっていう感じなんです。

だから逆に、誰が見てもおもしろい映画を作るっていうことは、僕のなかでは新しいなと思って、今回の映画『新宿スワン』の監督をやらせて頂いたんです。
脚本も、キャスティングもほとんど決まっているなかに、監督として入っていくというのは、初めての経験だったんですが、驚きの連続でしたね。やっぱり、新しいことをやろうとしても、全部自分が考えたことなんで、飽きちゃうんです。そういう意味で、今回は、新しい風を自分の中に吹き込んでもらえたので、殻をぶち破ることができたんじゃないかなと思っています。

たとえば、今回主演している綾野剛や、沢尻エリカ、いわゆるスターと呼ばれるような役者とは、あまり仕事をしてこなかったし、苦手だなと思っていたんです。ただ、実際に仕事をしてみると、苦手意識は自分の勝手な思い込みで、沢尻とも親しくなったし、綾野とは、メールのやり取りを毎日するくらい仲良くなっちゃった。

これは、自分が、キャスティングやら脚本を全部決めていたら、得られないものですからね。ひと皮むけたのかもしれません(笑)。
この作品と並行して、今年はたくさん映画撮りましたね。何本撮影したのか忘れるくらいで、配給会社のほうから、1年にそんな何本も公開したら、宣伝が追いつかないと逃げ出しちゃいました。
撮影したけど、公開を来年に先送りした作品が多くて、来年は8本公開が控えています。
映画って、他の分野と違って、良くない意味で1作品が重いと思うんです。音楽では、1年に1曲しかつくらないなんてことはないでしょうし、画家も1年に1枚しか描かない人も滅多にいないはず。そのぐらいの、いい意味での軽さで映画をつくってもいいんじゃないかなと思っているんです。

だから、『新宿スワン』と並行しながら、自分の中で、新しいと思うことを追求した自主制作映画もつくっているんですが、完全に真逆の作品。白黒映画で、セリフもほとんどない。名前隠して公開したら、絶対、『新宿スワン』と同じ人がつくった映画には見えないような作品です。
でも、どっちが本当の自分かというわけではなく、どちらも僕なんです。音楽で例えれば、アルバムで1曲目がアップテンポの曲で、2曲目がアコースティックになったからといって、慌てる人はいないじゃないですか。
だから、そんな新しい価値観で、今後もいろんな映画をつくっていきたいなと思っています。

撮影/弦巻 勝


園子温 その・しおん

1961年愛知県生まれ。17歳で月刊誌『現代詩手帖』に投稿し、詩人デビュー。「ジーパンをはいた朔太郎」として注目される。1987年、『男の花道』PFFグランプリ受賞。その後、『冷たい熱帯魚』で第67回ヴェネチア国際映画祭に招待されるなど、国内外問わず、評価された。2012年の『ヒミズ』は東日本大震災後の世界を描き、大きな話題となった。様々なジャンルの映画を送り出す鬼才の映画監督。

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