プロ野球「奇跡の大逆転」感動エピソード

球球史をひも解くと、大差を引っくり返した試合が、いくつか目につく。勝利を決して諦めないアスリート魂が生んだ"奇跡の大逆転劇"を、感動エピソードとともに紹介!

02年8月16日西武ドーム
全盛期の松井稼頭央が反撃の口火もトドメの一撃も決める!


近鉄VS西武


10点差が日本記録なら、準日本記録ともいうべき点差が9点差だ。
02年8月、西武は松坂大輔、松井稼頭央など、後にメジャーでも活躍する実力者たちの働きで、ぶっちぎりの強さを見せ、球団史上10年ぶりとなる"8月中のマジック点灯"というところまで、こぎつけていた。

同月16日、「この試合でマジック点灯」という大一番の相手は近鉄。西武の伊原春樹監督は、エース・松坂投手を先発のマウンドに送り、運命を託した。
だが、立ち上がりに難のある松坂が、いきなり近鉄打線に捕まった。2本塁打を含む7安打8失点。プロ入り最短タイとなる1回3分の2でKOされた。

2番手・三井浩投手もさらに追加点を許し、2回表で0-9。
ほとんど挽回不可能なダメージだが、西武にも意地はある。3回裏、3連打などで3点を返して6点差に迫ったのだ。
「だけど、3回までに10安打を放った近鉄の"いてまえ打線"の威力は凄まじい。まだまだ近鉄が追加点を取りそうな気配は濃厚でした」(パ・リーグ担当記者)

流れが変わったのは4回である。西武の2番手・三井投手が、近鉄のクリーンアップを三者凡退に抑えて沈黙させた。
そして、その裏、西武の反撃が始まる。二死一塁から1番・松井稼が左前打を放ったのを手始めに、西武がアレックス・カブレラ一塁手の37号2ランなど7連打で、一挙に10-9と逆転したのだ。

一方、西武の中継ぎ投手陣の踏ん張りで沈黙していた近鉄打線も、そのままでは終わらず、7回表に同点に追いつき、試合をいったん振り出しに戻す。

この裏、文字どおり近鉄の息の根を止めたのが、4回に反撃の口火を切った松井稼だった。今度は、三沢興一投手から目の覚めるような2ランを放ち、試合を決めてしまう。
「当時の松井稼は、まさに全盛期。メジャーからの評価も、先に海を渡った松井秀喜より高かったんです」(スポーツ紙デスク)

02年シーズンは特に好調で、2度の月間MVPのほか、史上2人目の2試合連続サヨナラ本塁打、スイッチヒッターとして史上初の5試合連続本塁打など華々しい活躍を見せていた。
西武は最終回、守護神・豊田清投手を起用し、難なく3人で終わらせた。この劇的な勝利で、マジック34を点灯させた西武は、8月19日から10連勝を果たし、すんなりとリーグ制覇を成し遂げた。

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