不老不死が実現!? 若者の血で老人が若返ることが実験で明らかにの画像
不老不死が実現!? 若者の血で老人が若返ることが実験で明らかにの画像

少女の血を風呂に貯めて入り、美貌を保とうとした「血の伯爵夫人」ことエリザベート・バートリーの話をご存じだろうか。バートリー家はドラキュラの元ネタとされるワラキア公ヴラド3世のいたトランシルヴァニア公国の貴族で、ハンガリー王国に嫁ぐが、領土内の若い娘をさらっては殺し、その血を浴びたという。

若い女性の血を飲んで若返るなど魔術以外の何物でもないが、血を飲むのではなく、血を循環させると若返るらしいことがトロント大学・トロント小児病院のベンジャミン・A・アルマン博士らの研究で判明した。マウスで行われた実験は壮絶。2匹のマウスの血管をつなぎ、生後20か月のマウス同士と生後20か月と生後すぐのマウスを結合させた場合とを比較したのだ。いわば人工的な双生児、ムカデ人間ならぬムカデマウスである。

この実験で、若いマウスとつながった成マウスの骨折や筋肉の回復(骨をわざと折ったりしたのだろうか……エグい)が早まることがわかった。Wnt/β-カテニン経路という細胞の代謝経路があるのだが、これはβ-カテニンという炎症のシグナルとなる物質の代謝に関わっている。β-カテニンは免疫を抑制し、体内の微生物や食べ物に過剰に反応しないように免疫系を抑制しているらしい。年をとるとβ-カテニンの働きが強くなり、炎症が起きにくくなる代わりに怪我も治りにくくなるのだ。

双生児にされたマウスの場合、若いマウスの血液を取り込むことで、成マウスのβ-カテニンの働きが抑制され、若いマウス同様の回復が起きたと考えられる。

だが免疫系を操作することは非常に危険だ。Wnt/β-カテニン経路は遺伝子の発現に深く関わっているため、単純に若い人間の血を老人に輸血すれば若返るかというとそういう話にはならない。老化により細胞の転写異常が起き、それを防ぐためにβ-カテニンが働いている可能性もあるからだ(だからβ-カテニンはガン細胞との関連で研究が進んでいる)。不用意にβ-カテニンを不活性化させれば、怪我の治りは若い人と変わらなくなる代わりに老化の進行が早くなるかもしれない。

老化するにはそれなりの理由がある。命に変なことをすると、とんでもないことが起きるというのはSFの定番だ。命の時計の針を逆転させる若返りの技術は、慎重に行った方がいいだろう。

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