すべての医者が「名医」ではないのには、理由があった!の画像
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一般の人のなかには、偏差値が高い有名大学を卒業した医師ほど信頼できると思っている人がいるのではないでしょうか。しかしそれも、必ずしも正しいとはいえません。
たしかに、質の高いまっとうな医療を行うには、かなりの学力が必要です。医学に関する幅広く深い知識はもちろんのこと、的確な診断や治療のためには、知識、技術、経験のどれが欠けてもいけません。

最新の医学の成果を身につけるには英語の論文を読みこなせねばなりませんし、研究成果を世界的な学術誌に投稿するにも英語が必要です。さらには、臨床試験などのデータを解析して学会や論文で報告するには統計学の知識も身につけねばなりません。
このように、医師として働くには理系・文系両方の科目に対応できる、総合的な学力が必要です。ですから医師は、厳しい受験競争を勝ち抜いてきた人たちにふさわしい職業だということはできるでしょう。

ただし、「医学部」がどういうところなのか、あらためて考える必要もあります。医学部はあくまで「職業訓練校」です。つまり医学部に入ったら、原則的に「医師」という職業に就くしかないのです。
たとえば、法学部に入ったからといって、全員が弁護士になるわけでも、国家公務員になるわけでもありません。会社員になる人もいれば、法律とは全く関係のない職に就く人もいます。だからといって、恥ずかしいことでも、おかしなことでもありません。

ところが、医学部に入ったら、その人が向いていようが、向いていまいが9割以上の人が「医師」になるしかないのです。そして、どんなに偏差値の高い医学部を出たとしても、医師になれば子どもからお年寄りまで、あるいはエリートから一般庶民まで、さまざまな人を診察しなければなりません。つまり、かなり高度なコミュニケーション能力が必要となります。

それに外科医の仕事は町工場の熟練工に似たところがあります。粘り強く経験を重ねることで、技術や感覚を培っていくような職人的なセンスが求められる仕事でもあるからです。こうしたコミュニケーション力や職人的なセンスが求められる仕事を、受験偏差値の高い天才型の人たちが必ずしも得意とは限りません。ところがいま、医師になれば安定した将来が約束されることから医学部の人気が高まり、どの医学部も偏差値が急上昇しました。
進学校や予備校でも、医学部合格者数が評価される傾向が高まり、偏差値の高い生徒には医学部を勧める風潮もあるといいます。その結果、理系の偏差値ランキングを見ると、有名大学の理学部や工学部まで押しのけ、上位の多くを医学部が占めるようになりました。


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