モンスタードクターにご用心! 危険な医師の見分け方の画像
モンスタードクターにご用心! 危険な医師の見分け方の画像

昔に比べ、手術の安全性は格段に高まりました。胃がんや大腸がんの手術では、病院によっては何千例も手術死亡(術死)ゼロという施設もあります。
またかつては10人にひとりが亡くなるほどリスクの高かった食道がんや肝胆膵がんの手術も、成績のいい施設では術死が100人に1人以下という低い数字になりました。とはいえいまも、術死を完全にゼロにすることはできていません。人体にメスを入れるものであるかぎり、手術が命にかかわる行為であるのは昔と変わりないのです。

術死が、患者の家族に大きなショックを与えるのは当然ですが、実は、医師にも大きなダメージを与えます。1例でも術死があれば「あのとき、ああすればよかったのではないか」と悩み、何日も落ち込んで次にメスを握るのが怖くなるのだそうです。
そして、二度と同じことを繰り返さないためにどうすればいいか、同僚の医師らと症例の検討を積み重ねてから次の手術に望むといいます。外科医といっても人間です。それが、人としてふつうの感覚だといえるでしょう。

ところが一部には、患者が死亡しても平気でメスを握り続ける医師がいます。それが「モンスタードクター」です。
「モンスタードクター」は、まわりの医師が「やめたほうがいいのではないか」と助言しても意に介しません。現実に、別の外科医から見て「本当に患者のためになっているのか」と疑問に感じるような無謀な手術を繰り返している医師がいるそうです。

特に問題なのが、自分の実力に見合わない難しい手術や新しい技術にチャレンジしようという外科医です。こうした手術に成功すれば、学会で高く評価され、病院での地位も向上します。医学の進歩のために、難しい手術や新しい技術に挑戦することは必要です。だからといって、安全性や根治治療(病気を完全になおそうと努力すること)が第一で、「患者のために最善の治療を提供する」という視点が欠けていてはいけません。

ところが、患者のことよりも、自己満足や功名心を優先するあまりに、難しい手術や新しい技術に安易に手をだす医師がいるのです。その結果、重大な合併症が続発し、患者が次々亡くなる――それが、「モンスタードクター」の典型的な姿といえるでしょう。
「モンスタードクター」にあたってしまった患者は、医師の自己満足や功名心のために「実験台にされた」といっても過言ではありません。

しかし、どんなに問題のある手術だったとしても、ほとんどは表ざたになりません。なぜなら、医師が「手を尽くした」と説明をすれば、大半の家族はそれを受け入れるしかないからです。そのために、どんなに無謀な手術だったとしても、誰にも咎められることなく、「モンスタードクター」は手術を続けることができます。それが、昨今、問題になっている「医療事故」が起こる背景にもあったといえるでしょう。


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