俳優・波岡一喜「俺、めちゃくちゃ負けず嫌いなんです」の画像
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「俺、めちゃくちゃ負けず嫌いなんです」

俳優っていう仕事は、待つことしかできないんですよ。自分がどうしてもこの作品の主役をやりたいなと思っても、監督とか、プロデューサーが声をかけてくれなければ、出演できませんからね。
何もできずに待っているだけって、もどかしくて正気ではいられませんよ。だから、その役をもらうために役に立つかどうかは、わからないけど、何かをやるんです。

最近、僕の芸能界の友人で流行っているのが毎日10キロ走るということ。今は携帯電話のアプリで走った記録を仲間内みんなにメールで送れるので、それで確認し合うんです。言い訳なしなんですよ。雨だからやらない、台風だからやらない、夜中まで撮影で、明日朝5時からまた撮影でも走らなきゃいけない。それはもう絶対のルールなんです。
別に走ることに意味があるわけではないんです。でも、俺は何もやっていないわけやない、毎日10キロ走ることを続けてんねや。俺は前に進んでないわけやない、進んでんねや、進んでんねやって思うために続けるんです。

これってすごく大事なことだと思うし、自信になるんです。
俺も何をやっているのか、人に話さないようにしているんですが、毎日欠かさずやっていることはあるんです。ただ、このランニングをやろうかどうか、すごく迷っているんです。めちゃくちゃ負けず嫌いなんで、一度やり出したら、やめられないので。

昔は、今以上にがむしゃらでしたね。役者になるために上京しようとした時も、オカンから、"大学に行くことが条件だ"って言われて、それから慌てて勉強したんです、毎日10時間。もはや修行でしたね。高校生の時は、夜遊びばっかりしていたんで、テストは360人中、320番くらいでしたから、本気でしたよ。東京に出たいってのもありましたが、なによりかっこ悪いじゃないですか。親にカネ出してもらって、勉強したのに、できませんでしたって。

で、猛勉強のおかげで無事に大学に入れたので、大学の劇団に入ったんです。そしたら、毎日毎日筋トレでした。当時、体脂肪率7%でしたからね。当初は100人いた同期が、最後は5人になっていましたね。
そんなことを毎日続けていると、芝居ってなんなんだろうってわけわかんなくなってきて、全然おもしろくねーんじゃねえかなと思ったんです。でもやっぱり、辛くてやめるってかっこ悪いなと思って、その後も劇団でトレーニングを続けました。

結局、根底にあるのは負けず嫌いっていうことだと思うんです。井筒和幸監督の映画『パッチギ!』で、映画デビューさせてもらったんですけど、まぁ、めちゃくちゃしごかれたんです。何をやっても"学芸会やめろ"って毎日のように言われて、"なにくそ"って気持ちで、乗り切れたんです。

ただ、毎日が辛かったおかげで、『パッチギ!』の共演メンバーと、スタッフには戦友のような絆ができましたね(笑)。高岡奏輔ともそこで知り合って、今でもよく遊ぶ仲になったんですよ。
彼とは、その後、映画『クローズZERO』でも共演したんですが、今回の『仁義なきやくざ』で久々に共演させてもらいました。

今作は、一大勢力を築いた組織の内部抗争を描いたものなんですが、腐敗してしまった組織を立て直すために立ち上がる組織、それを良しと思わない敵対する組織が出てきて……。その敵対組織に所属するかつての兄弟分を奏輔が演じているんです。
なので、2人のシーンがたくさんあったんです。普段の会話とは違う、芝居を通して会話するっていうのができたので、嬉しかったですね。

普段、芝居の話ってしないんですよ。正直、俳優同士で芝居談義なんかしたら、お互い考えていることが違うわけで、それを正しいと信じてやっているわけですから、喧嘩にしかならないですよ(笑)。

撮影/弦巻 勝


波岡一喜 なみおか・かずき

1978年8月2日、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。04の木村拓哉主演『プライド』でドラマデビュー。05には映画『パッチギ!』で映画初出演を果たす。その後『クローズZERO』シリーズなど数多くの映画・ドラマ・舞台などに出演。最近はCM・バラエティー番組出演など、その活躍の場を広げている。映画『図書館戦争THE LASTMISSION』公開中。名古屋テレビ連続ドラマ『三人兄弟』放送中。スカパー連続ドラマ『恋の時価総額』も放送を控えている。

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