『中年がアイドルオタクでなぜ悪い!』(小島和宏・ワニブックス)という本を読んだ。
この本に興味を持ったのは、著者の小島氏が『週刊プロレス』の元記者であるということだ。それも90年代に売れに売れた「あの頃の週プロ記者」である。2008年に出版された『ぼくの週プロ青春記』(白夜書房)も名著だった。
その人が、現在「ももいろクローバーZ」について書く第一人者であるらしいことは知っていた。この際ちゃんと読んでみようと思った理由だ。もうひとつは、『中年がアイドルオタクでなぜ悪い!』というタイトルでもわかるように、この本はどうやら「コンプレックスの解放」「誤解する世間へのプレゼン」「美しき開き直り」の匂いがプンプンするのである。
これはまさに、かつてのプロレスファンの戦いとまったく同じではないか。たぶん本書はアイドル本であると同時にプロレス本なのだ。モノの見方を問うているに違いない。
するとさっそく……、おっさんならではのアイドル好きの特権と主張する、《うしろめたさはドキドキを加速させ、恥じらいはワクワクを拡大させる(=究極の大人の嗜み」)》という一文があった。私が昭和プロレスに対する世間の目に思い悩んだあげく、到達した論理をさっそく思い出した。
世間が知ろうとしない現場のことを述べるのは、世間への重要なプレゼンである。
《1曲しか披露できない歌番組ではなかなか伝わらないのは歯がゆいが、1時間、2時間とライブを繰り広げていく中で、彼女たちが流す汗や、それだけ長い時間、お客さんを飽きさせないだけのパフォーマンス力を知ってもらえば「アイドルは子供向けのコンテンツ」だとバカにすることなんてできないはずだ。》
テレビ番組で時折取り上げられる「オタ芸」については、実際のアイドル現場ではもはやほとんど見ることはできないと書いたうえで、
《テレビ的には絵面が面白いのと「どうですか、やっぱりアイドルオタクってキモイでしょ?」というメッセージを無言のうちに視聴者に伝えやすいこともあって、いまだに取り上げられるのだろうが、もはや、ああいう行動はアイドルの現場にはそぐわないものになっているんだ、ということをまずご理解いただきたい。》
《無秩序に荒れまくるアイドルオタクの図、というのは、メディアによる「記号化」しかないのだ。》
現場を見ない人の偏見・決めつけとの戦いは永遠のテーマである。アイドルも、かつてのプロレスも、他のすべてのジャンルも。
これらのほか、『アイドル現場は大人の社交場』『先人から学ぶ中年アイドルオタクの「ダンディズム」』『アイドルオタク=ロリコン、ではない!』などなど、小島氏、熱く戦っている。
やっぱり、良いプロレス本を読んだ思いです。
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