宝塚のレジェンド! 生涯現役を貫いた「96歳のタカラジェンヌ」の画像
宝塚のレジェンド! 生涯現役を貫いた「96歳のタカラジェンヌ」の画像

 未婚の女性のみで構成される劇団、それが宝塚歌劇団だ。多くのタカラジェンヌが10年、20年以内に宝塚を去っていく中、「生涯現役」を貫いた人がいる。それが春日野八千代だ。“宝塚の至宝”といわれ、男役として初めてつけまつげやパーマを導入。「男役」の人気を揺るぎないものにした立て役者だ。

 1929年に初舞台を踏み、当初は娘役だったが男役に転向。『虞美人』『源氏物語』などの好演で人気を博し、劇団のファンは男性から女性中心になっていった。戦時中の苦しいときでも、厳しい検閲をかいくぐりながら上演を続け、日本や満州での慰問や後進の指導にあたった。

 彼女がいなくては、宝塚歌劇も戦後の芸能史も、今とまったく違ったものとなっていただろう。その人気はすさまじく、名古屋公演終了後には宿舎を囲んだファンにより市電が止まり、春日野八千代が警察で事情聴取をされるという珍事もあった。

 1949年には宝塚歌劇団理事に就任し、舞台出演とともに宝塚歌劇の発展のために尽くし続ける道を選ぶ。現在宝塚では、原則としてタカラジェンヌとしていられるのは最長でも65歳まで。しかし劇団理事はその規定が適用されないため、春日野は生涯現役として、晩年まで舞台に立ち続けた。2004年、87歳のときには宝塚90周年の記念公演で男役の神髄を体現。そして2009年の宝塚95周年記念のトークショーが最後の舞台となった。

 誰よりも宝塚を愛した“96歳のタカラジェンヌ”は、残念ながら宝塚歌劇100周年の2年前、2012年にこの世を去った。しかし、「白薔薇のプリンス」春日野八千代の残したものは、今なお宝塚で燦然と輝く。タカラジェンヌの胸に、宝塚を愛するファンの胸に、彼女は生き続けるのだ。

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