天海祐希を宝塚トップにのし上げた「伝説のアドリブ」の画像
天海祐希を宝塚トップにのし上げた「伝説のアドリブ」の画像

 宝塚歌劇団の舞台というと、「お堅い」「まじめそう」というイメージを持たれている方も少なくないだろう。もちろん、演目によってはそのイメージ通りの劇もあるが、逆に毎日笑いが絶えないような舞台もある。それは「アドリブ」の入る公演だ。

 たとえ結末が悲しい作品であっても、随所に挟み込まれるアドリブでは会場に笑いが起こる。その時々の役者の感覚から生まれるアドリブシーンは、二度と同じものを見ることはできない。また、舞台上で起きたトラブルに対応するために、奇跡的に生まれるアドリブだってある。まさに“舞台は生物”ということを実感できるのも、宝塚の魅力なのだ。

 著名人が観劇している際にそのことをいじったり(SMAPの香取慎吾が観劇に訪れた際は、アドリブでタカラジェンヌたちがSMAPの曲を次々と歌ったことも)、普通なら30秒程度のシーンがアドリブのやりとりで5分以上に伸びたり、ということもある。

 また、アドリブシーンが入るのは、お芝居だけとは限らない。ショーの要所でも、アドリブによる決めゼリフが入ることがある。特に全国ツアー公演では、ご当地ネタや方言を使い、客席が大いに盛り上がる。

 もちろん、タカラジェンヌにもアドリブの得手不得手があり、星組トップスターの北翔海莉(ほくしょう・かいり)や、月組の龍真咲(りゅう・まさき)は「アドリブの名手」として知られる。そんな中でも「伝説のアドリブ」で有名なのは、かつてのトップスター天海祐希の入団一年目。入団10カ月という異例のスピードで新人公演の主演に抜擢された天海だったが、公演中の舞台上で小道具が粉々に壊れてしまう。天海はこのハプニングにも動じず、散らばった破片を拾い集めながら、アドリブでこのシーンを乗り切った。その舞台度胸が評価されて一気に注目を集め、入団7年目でトップスターに就任した。

 宝塚の舞台は、想像以上に遊び心にあふれている。100年以上続く伝統があるからこそ、基本を大切にしながら、自由に舞台上で動き回れるのだ。舞台は生物。ぜひ一度、劇場で宝塚のアドリブシーンを楽しんでほしい。

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