「ラスト侍」とは言い得て妙だ。3月の第2週に開幕するWBC日本代表の「28人目の男」に広島・田中広輔が選出された。ショートのレギュラーは巨人・坂本勇人。それは田中も織り込み済みで、「バックアップだと思うので、しっかり役割を果たしたい」と抱負を述べた。

 当初、小久保裕紀代表監督は、ショートのバックアップ要員として北海道日本ハム・中島卓也、福岡ソフトバンク・今宮健太の選出を検討していたようだ。ところが中島はコンディション不良で辞退、今宮も昨年10月に受けた右ヒジの手術から間がないということもあって見送られた。

 田中にすれば、巡り巡って訪れた千載一遇のチャンスというわけだが、運も実力のうちである。トランプでいうジョーカーの役割を果たしてくれるのではないか。

 まずもって、この男、短期決戦に強い。昨年のセ・リーグCSファイナルステージ、横浜DeNA戦では当たるを幸いに打ちまくった。12打数10安打で打率8割3分3厘、出塁率8割8分2厘。手が付けられない暴れっぷりでCSのMVPに輝いた。

 しかも彼は左打者でありながら、左投手を全く苦にしない。昨年は右ピッチャー相手に2割5分の打率を残したのに対し、左ピッチャー相手には、それをはるかに上回る2割8分3厘。本人も「昔から左を苦手と思ったことはありません」と語っていた。海外のチームに、田中がここまで左に強いという情報が入っているとは思えない。左対左は望むところだろう。

 守備はどうか。先述したように、求められる役割はショートのバックアップだがサードもセカンドも守れる。コンビネーションを考慮し、同僚の菊池涼介とセットで使うという手もある。

 WBCは春浅い時期に行われるため、選手には故障のリスクが付いて回る。バックアップメンバーにもレギュラーと同等の役割が求められる。「残り物には福がある」ような気がしてならない。

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