「I can pitch!」 志願の登板だったようだ。さる6月30日(現地時間)、本拠地でのヤンキース戦で、19日前に日米通算2000本安打を記録したばかりのアストロズ青木宣親がマウンドに上がった。

 4対10と敗色濃厚の9回の場面。青木は2四球に二塁打、犠牲フライなどで3点を失ったが、目下、ア・リーグ本塁打王のアーロン・ジャッジから空振りを奪う“奮投”も見せた。宮崎・日向高時代は「エースで3番」。その意味では全くの“ド素人”というわけではない。

 だが、“球界のご意見番”である張本勲には我慢がならなかったようだ。TBS系の『サンデーモーニング』で一喝した。「青木を起用した監督、青木にも喝。草野球じゃないのよ。アメリカ野球にもがっかりしたね。こんな野球やっちゃダメだよね」。返す刀で「入場料を払っているんだから。それ全部返した方がいいよ」とも。

 日本人野手がメジャーリーグのマウンドに上がったのは、青木が初めてではない。2015年10月4日にはマーリンズのイチローが2対6の8回にマウンドに上がり、1回2安打1失点の記録を残している。言うまでもなく、イチローも愛工大名電高時代はピッチャーだ。

 野手の緊急登板は是か非か? 私見を述べれば「止むをえない措置」である。というのもNPBの1軍登録が28人であるのに対し、MLBは25人。スケジュールもタイトなため、敗色濃厚な試合では、できるだけリリーフを無駄遣いしたくないというのが監督の本音である。

 青木が緊急登板した30日のヤンキース対アストロズ戦はヤンキースが7回に4点を追加し、10対3としたところで実際には“勝負あり”だった。結果的には4対13と大敗した。

 だが、翌7月1日の同カードはアストロズが7対6で逆転勝ちを収めた。最後の1イニングはクローザーのケン・ジャイルズがピシッと締めた。勝利の背景として、前日の青木の“献身”を忘れてはなるまい。

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