CSファイナルステージで東北楽天を退け、2年ぶりの日本シリーズ進出を決めた福岡ソフトバンクの1軍ベンチには、4人の元「育成」選手がいる。ピッチャーではローテーションの柱として今季13勝(4敗)をマークした千賀滉大、34試合に登板して8勝(3敗)をあげた石川柊太、左のセットアッパー、リバン・モイネロ。キャッチャーの甲斐拓也は103試合もマスクを被った。

 背番号の変遷が彼らの“出世魚”ぶりを物語っている。千賀128→21→41、石川138→29、モイネロ143→35、甲斐130→62。1対2で敗れはしたものの、ファイナルステージ第2戦は千賀-甲斐の「育成バッテリー」でスタートした。王手をかけた第4戦では石川が6回の1イニングを3人で切り抜け、球団の育成出身では初のCS勝利投手となった。

■プロ野球に「育成選手制度」が設けられたのは2005年

 プロ野球に「育成選手制度」が設けられたのは2005年。選手は2次ドラフトで指名する仕組みだ。年俸は最低年俸が230万円と決まっている。契約金ではなく290万円の支度金が支払われる。しかも契約期間は3年。それ以内に支配下選手にならなければ、自動的に自由契約になる。すなわちクビだ。

 こうした厳しい環境に身を置けば、いやがおうにもハングリー精神が芽生える。千賀、石川、甲斐の3人は合宿所から博多湾を挟んで見えるドームをながめながら、「いつかあそこでやりたい」と闘志をたぎらせたという。育成ドラフトの導入を受け、ソフトバンクは11年に3軍制を敷いた。先の3人は、ここでしっかりと基礎体力を養い、プロを生き抜くスキルを身に付けたのである。

●スカウトの眼力、ダイヤモンドの原石を磨き上げる育成能力

 ソフトバンクには“金満球団”のイメージがあるが、それだけではチームは強くならない。無名ながら好素材を発掘するスカウトの眼力、ダイヤモンドの原石を磨き上げる育成能力がコーチに備わっていればこその栄華(10年間で優勝5回)と言えよう。

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