『わろてんか』、遠藤憲一の“こわもて”はドラマの柱だった!?の画像
『わろてんか』、遠藤憲一の“こわもて”はドラマの柱だった!?の画像

 10月から始まった連続テレビ小説『わろてんか』(NHK)は、早くも今週で7週目。ヒロインであるてん(葵わかな/19)の説明的な話や、ドタバタと新キャラが登場する回も少なくなり、そろそろドラマとして軌道に乗ってきたようだ。それと同時に見えてきたのが、このドラマの「型」。毎日見ている人にはご納得いただけると思うが、このドラマ、「一難去ってまた一難」が基本なのだ。

 先週の土曜日に放送された第36回もそうだった。てんは実家である藤岡家に、一人で赴いていた。藤吉(松坂桃李/29)とともに寄席を開くためのお金を無心するためだった。勘当した娘のこの行動に対して、両親の儀兵衛(遠藤憲一/56)としず(鈴木保奈美/51)は厳しい表情を見せるが、藤吉が頭を下げ、祖母のハツ(竹下景子/64)が助け舟を出したことで、儀兵衛はお金を用意することを決心する。そして、てんはその夜、儀兵衛と短いながらも二人の時間を過ごす。てんがもう敷居をまたがないと決めて以来、初めての親子の再会。しずはこれを優しく見守るのだった。

 冒頭にも書いたが、「一難去ってまた一難」が『わろてんか』のスタイル。先週も毎日のようにトラブルと解決、そして次のトラブルという展開が続いた。慌ただしく見えるこの展開には、2つの理由がある。

 1つ目は、このドラマがヒロイン夫妻の成功までを描く、長期間の話だということ。基本は成功譚なので、当然、ドラマはどんどん前に進んでいかないといけない。てんのモデルである吉本せいは、60歳で亡くなるまで、笑いを商売として活躍を続けた人物なので、この展開の早さは物語終盤まで続きそうだ。

■意外にハマった遠藤憲一の起用

 2つ目の理由は、この作品が“朝ドラ”であること。ストーリー上、てんたちはどんどん成功していかないといけない反面、視聴者は15分という短い時間の間に、面白さおかしさを求めている。そこで、毎日のように起こるトラブルが必要になってくるのだ。

 1か月半、『わろてんか』を見て、この構造が分かったところで、あらためて注目したいのが遠藤憲一だ。第36回ではセリフも少なく、顔で見せる芝居がほとんどだったが、威厳の中から隠しきれない父としての優しさがにじみ出ていた。物語の序盤では主役級の活躍を見せていた遠藤だが、久しぶりに見ると、その存在感の大きさをより強く感じられた。当初は、朝なのにこれだけのこわもてで大丈夫なのかと思ったが、これが見事にハマっているのだ。

 もちろん、遠藤の芝居のうまさもあるが、“トラブルと解決”という展開が連続する『わろてんか』との相性も良いのではないだろうか。考えてみれば、“ギョロ目の鬼さん”と呼ばれる儀兵衛とヒロインのてんとの関わりは、トラブルの連続だったが、最後にはうまくいく。この緊張と緩和が、このドラマの魅力になっているのだ。誰が見ても怖い遠藤の演技が緊張をより高め、ドラマを盛り上げていることは間違いない。

 実は遠藤は『てっぱん』(2010年下半期)でもヒロインの父親を演じていて、朝ドラの父親役は慣れたものだ。現在の『わろてんか』は、大阪が舞台となっているため、登場回は少なくなってしまいそうだが、ギョロ目の鬼さんが出てきたら今後も要注目。トラブルの後に、大きな感動が待っているはずだ。(半澤則吉)

朝ドラ批評家半澤の朝ドラブログ
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