シロアリは「住宅のがん」被害の兆候と予防や駆除の平均費用は!?の画像
シロアリは「住宅のがん」被害の兆候と予防や駆除の平均費用は!?の画像

 いつの間にか家屋の基礎や柱がボロボロになっていた、なんてシャレにもならない。シロアリの被害は床下で粛々と進行し、気づいたときには取り返しのつかない事態になっていることが多い。大規模な巣ができているとなると、補修すら難しくなってしまう。大切な我が家が一大事になる前に、シロアリの見分け方、予防対策、被害のサイン、対処法、退治を専門業者に頼む場合の注意点と、料金相場などをご紹介。頭に入れておいて損はないはずだ!

■実はアリじゃない!? シロアリの種類と特徴

 まず最初に、シロアリの基本的なプロフィールをチェックしてみよう。属しているのは昆虫網・ゴキブリ目・シロアリ科だ。腐った木など植物死骸を餌にするのはシロアリもゴキブリも同じ。そう、シロアリはゴキブリの仲間なのだ。

 ゴキブリと異なるのは社会性。シロアリは生殖能力のある女王アリを頂点とし、働きアリ、兵隊アリと階級制のコロニー(巣)を築いて暮らす。成虫も幼虫も見た目はそう変わらないが、女王アリだけは他のシロアリの何倍もの大きさになり、1日に何万個と産卵することもある。陸地であればだいたい地球上のどこにでも生息し、特に亜熱帯に多く見られる。日本に分布するシロアリは大きく3種類。それぞれの特徴を見てみよう!

【ヤマトシロアリ】

  • 女王アリ:体長は最大で15ミリ。
  • 羽アリ:体長5から7ミリ。全身が黒褐色で、羽が薄い。
  • 働きアリ:体長は4から6ミリ。
  • 兵隊アリ:体長は3.5から6ミリ。頭部が前後に長い。
  • 分布/暑さに弱く、どちらかというと北日本に多い。
  • 群飛/4~6月の雨上がりの昼間に見られる。
  • コロニー/枯れ木の中に巣穴を作る。気温や加害の進み具合によって移動する。
  • 群の個体数/2~3万匹。
  • 特徴/水を運ぶ能力がない。湿った木材にしか入らない。寒さに強く、北海道北部をのぞく全国に分布。日本におけるシロアリ被害の8割がヤマトシロアリによるものともいわれる。被害の範囲は限定的。

【イエシロアリ】

  • 女王アリ:最大で40ミリ。
  • 羽アリ:体長は7から8ミリ。
  • 働きアリ:体長は5から7ミリ。
  • 兵隊アリ:体長3.8から6.5ミリ。
  • 分布/寒さに弱く、主に南日本に多い。
  • 群飛/6~7月の急に暖かくなった日、夕方~夜間に見られる。
  • コロニー/湿った地下に巣を作り、そこからトンネルをつなげて大規模に加害する。ヤマトシロアリより、大きな被害をもたらすことが多い。
  • 群の個体数/最大で100万匹。
  • 特徴/水を運ぶ能力がある。木材にとどまらず、コンクリートや立木、書籍、地下ケーブルも食べる。

【アメリカカンザイシロアリ】

  • 女王アリ:体長は10ミリ程度。
  • 羽アリ:体長は6から8ミリ。頭部は赤褐色、他は黒褐色。
  • 働きアリ:体長は5から8ミリ。全体が乳白色で、ほぼ円筒状。
  • 兵隊アリ:体長は8から11ミリ。頭部は濃褐色で、頭部前方が黒色。
  • 分布/全国に薄く分布。
  • 群飛/7~10月の急に暖かくなった日に見られる。
  • コロニー/ひとつの群れで1か所とは限らず、分散して巣を作ることがある。
  • 群の個体数/数十から数千匹。
  • 特徴/メキシコ北部から北米西部が原産の、外来種。進行はゆっくりだが、乾いた木材にも巣食い、家具やフローリング、窓枠、扉、電柱、畳なども侵食される。

 これらのシロアリ、人間にとっては害虫だが、生態系においてはちゃんと存在意義もある。シロアリにはセルロースを分解する機能があり、枯木や落葉などがシロアリに食べられ、消化、排泄されると自然界で再利用が可能になる。シロアリは生態系の維持に、重要な役割を果たしているのだ。

■羽アリの状態で見分ける、シロアリとその他のアリ

 アリやシロアリは、数年に一度、羽アリの状態で大量に巣から飛び立つ。羽アリとは幼虫が脱皮する際の最終形態だ。飛んでいる時間は短く、数十分間。ゆえに距離も数百メートルが限界だ。つがいになって着地すると羽は体から落ちてお役御免となり、雌雄が女王と王になって地中で産卵。そこからどんどん増殖する。羽アリやジョオ王ありなど生殖虫には眼があるが、働きアリと兵隊アリには眼がない。

 羽アリがブンブンと飛び回っていたらシロアリ被害を疑ってもいい。しかし、羽アリといってもシロアリでなく普通のアリである可能性も。ちなみに我々がいつも目にしているアリは、昆虫網・ハチ目・スズメバチ上科・アリ科で、こちらは特に人間への被害はない。

 シロアリと一般的なアリの違い、判別項目はコレだ!

【シロアリの羽アリ】

  • 触覚/数珠状で曲がらない。
  • 胴体/ずん胴でくびれがない。
  • 羽/4枚とも同じ大きさ。
  • 群飛時期/4~7月。
  • 巣/湿った木材や土の中。

【アリの羽アリ】

  • 触覚/棒状の節が連なり、曲がる。
  • 胴体/ウエストが大きくくびれ、お尻がぷっくり膨らんでいる。
  • 羽/4枚。前の羽が大きく、後ろの羽が小さい。
  • 群飛時期/最も一般的なクロオオアリは5月、トゲアリは10月など種類によって異なる。
  • 巣/多くは土の中。たまに木や竹の空洞。

■湿気が大好物! シロアリ早期発見のポイント

●どんなところに巣ができるのか

 シロアリは湿度が高い暗所を好む。まず害が起きやすいのが、床下だ。特にタイル張りの風呂場やトイレ、台所など家の水回りの地下には要注意! また、外と直接繋がっている玄関も狙われやすい。家のそばに木材やダンボールを放置したり、水撒きをしたりすれば温床になりかねない。水が大好物なので、天井の雨漏りしている部分も危険だ。

 ことに最近の家は快適性を追求するため、部屋と外壁の間に断熱材を挟むことが多い。この空間に忍び込んだシロアリがコロニーを作ってしまうケースもある。こういった場所は1年中一定の気温が保たれ、天敵がいないため、冬場でもシロアリが活動する。

●蟻道を見つけたら巣がある証拠

 アフリカの地上に作られた、人の背丈以上もある山のような蟻塚の写真を見たことがないだろうか。これもシロアリの一種の仕事だ。働きアリがせっせと土を運び、巣と巣へと移動する蟻道を作る。家の外からコンクリートの基礎部分へ、床下から天井へと、生存に適した場所と餌を求めて増殖する。

 木材に限らず、コンクリートや鉄筋の上であっても、土を固めたような筋を見つけたらシロアリがいるかもしれない。

●木以外に、こんなものもシロアリの餌に!

 主食は木材に含まれるセルロース。好みの木は、柔らかくて食べやすいマツ類、モミ、ベイツガ、スプルースなど。しかしイエシロアリの場合、食害にあうのは木材だけではない。段ボールや発泡スチロール、プラスチックなどを食い荒らすこともある。

●シロアリの天敵は?

 体の多くがタンパク質でできているため、他の虫や鳥、カエルやモグラによって捕食される。クロアリにもよく食べられている。あまりに乾燥した寒い場所では生存しにくいが、イエシロアリやアメリカカンザイシロアリは水分がなくとも巣を作るので侮れない。

●被害の兆候となるポイントはコレ!!

  • 1)春~7月にかけて羽アリが飛んでいる
  • 2)戸が開けづらい
  • 3)床を踏むとモコモコして沈む感じがある
  • 4)近所でシロアリ被害があった
  • 5)家の側に池や井戸、川がある
  • 6)木くずやフンが落ちている
  • 7)蟻道ができている
  • 8)壁や柱を叩くと空洞があって響くような感じがする

■シロアリの予防法

●施工時の対策

 シロアリが好まない木材は、防虫効果があるとされるヒノキ、ヒバ、コウヤマキ、ケヤキ、チークなど。このような耐蟻性のある建築材を使い、床下と屋根裏の通気性を確保できる設計にしたい。また、壁と外壁の間の空調空間などに、あらかじめ予防の薬剤を仕込んでおく方法もある。

●掃除

 床下はもちろん、家の周辺に廃材や枯れ木などを放置しないこと! 標的は木材だけではない。

●点検

 できるなら、床下のチェックはしておいたほうがいい。自分の目で確認するなら、用意するものはヘッドライト、マイナスドライバー、ゴーグル、マスク、軍手、汚れてもいい服装、そして外で待っていてくれる相方。また、シロアリを採取できる瓶やジップロックなどもあるといい。床下から出た後で種類を確認するためだ。通気口から匍匐(ほふく)前進で床下に侵入し、柱や隅に蟻道を探してみよう。万が一見つかったら、ドライバーでつついて一部を壊してみる。しばらくして働きアリが顔を出すかもしれない。働きアリは目が見えず、光も感知しない。攻撃力もないので、そう警戒する必要はなし。

●薬剤で予防する方法

 床下の地面や家の土台部分の柱に防虫剤をかける。ホームセンターにはDIYのシロアリ対策グッズがいろいろと売られている。防虫剤はスプレー、液状、粒状などが主流。柱用と土壌用がある。ただし、床下に潜ってうまく仕込むのは骨が折れるだろう。DIYと業者、どちらも効果は5年前後。

●無料点検のセールスにはご注意!

 無料で気軽に点検するといって床下に潜り、実際に被害がなかろうと、不安をあおって高額な駆除プランなどをふっかけてくる悪徳業者もいるので、注意したい。

■シロアリの駆除法と価格相場

 もしシロアリ被害が発覚したら、直ちに退治するしかない。駆除の手法は、大きく分けて薬剤散布とベイト工法の2タイプがある。

●薬剤散布

 薬剤散布には、木部処理と土壌処理がある。木部処理は、基礎の上に立っている柱などに殺虫剤や防腐剤をスプレーするか、穴を開けて直接注入する。一方土壌処理は、薬剤を床下の地面やコンクリートの面にまく。シロアリは外から地中を通って侵入してくるパターンが多いので、薬剤散布のほか、シートを被せる工法もある。使用する薬剤はシロアリの神経伝達系を攻撃する、ビレストイド、カーバメイト、有機リン酸など。人体にとっても危険なので、DIYで行う場合は必ず専用の防護マスクなどを装着すること。

●ベイト工法

 ベイト剤という駆除剤入りの餌をシロアリに食べさせ、巣に帰ったところで壊滅を狙うというもの。シロアリが、仲間と餌を分け合う習性を利用する。シロアリが食べてから脱皮できずに死んでいくまでタイムラグがあるので、速攻性は低いが、経験値の高い業者によれば、根こそぎ撃退できる可能性は高いという。自力で行う場合は、ホームゼンターなどで容器入りのベイト剤を購入し、巣の近くに置いておくだけ。手軽で比較的人間や動物への害が少ない。

●駆除の価格相場

 DIYの場合、散布用の薬剤は、容量にもよるが数千円程度。それ以外にマスクなど備品購入の雑費も考えておこう。ベイト剤は2,000円前後だ。

 業者に頼む場合、薬剤散布の駆除費用相場は、坪単価での価格設定が一般的。一坪あたり1,000から6,000円が相場だろう。広さにもよるが10から40万円程度で収まるケースが多い。

●業者に依頼する際の注意点

 シロアリ被害が発覚すると焦ってしまうため、雑な業者やボッタクリ業者に引っかかることもある。慌てずに、少なくとも3社から見積もりを取って比較検討したい。見積もりのために調査に来てもらう際は、実際に巣ができている部分の画像や動画を撮って見せてくれるところだとまずまず安心だ。しかし、ネット上の評価だけでは信ぴょう性が低いので、頼りになるのは口コミ。実際に駆除を頼んだ知人に相談し、紹介を受けるのが心強い。

 また、一概に坪単価が安いからといって飛びつくのは考えもの。事前の調査、駆除、駆除の後の養生、それらの作業日に発生する駐車場費などが含まれているか、駆除後の保証期間はどれぐらいか、も含めて検討したい。

■冗談じゃないシロアリトラブルのエピソード

「昭和30年代に建てた実家の床下がやられていました。重い木のタンスをずっと置いていた、その下だったので異変に気づきませんでした。ある時徐々に床が傾き始め、初めて被害が明るみに」(岡山県・男性)

「春先に羽虫がたくさん飛ぶので、不安になって点検を頼んだ。すると庭に放置していた犬小屋に巣があって、家の基礎に土のラインを発見。イエシロアリに柱が食われかけていた」(栃木県・女性)

「集中豪雨で家の裏山が土砂崩れに。隣の家は持ちこたえたが、我が家は半壊。立て直すときに判明したが、柱の天井近くまでシロアリにボロボロにされていた」(大分県・女性)

「慢性化した雨漏りを放置していたら、天井にまでシロアリの巣が! 地上から巣にるまでの柱もシロアリによる穴だらけだった」(神奈川県・男性)

●買った中古物件に被害発生!

 購入する際、リフォームをするしないに関わらず、住宅診断で床下の調査をやっておくべき! また、購入時には必ず保証書の類を受け取る。ほとんどの場合、そこにシロアリに関する保証内容や期間が明記されているはずなので、契約前に絶対チェックしておきたい。うっかりしていて、入居数年後にシロアリ被害が発生。「買った時点からいたのでは?」「いえ、知りません」と水かけ論になって、自腹を切るハメになりかねない。

●シロアリ被害は住宅保険に適用される?

 住宅保険といえば、大きく火災保険と地震保険だろう。しかしどちらも、シロアリ被害は対象にならない。雑損保険というタイプなら、虫害も対象になる場合がある。その他、駆除業者などが提供するシロアリ保険というものある。

■まとめ

 ゴキブリ目で、長い生命の歴史を生き抜いて来たと思われるシロアリ。もちろん生きる権利はあるのだが、大事なマイホームが餌食になるのはご容赦願いたいものだ。今のところ大丈夫だと思っていても、普通のアリとシロアリの違いを見分けられるかや、予備知識の有無では、潜在的な危険度が異なる。その特性を知っていれば、早い段階で発見、駆除ができるはずだ。

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