「家族葬」では香典を辞退する? メリットやマナーを徹底解説!の画像
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 高齢化、核家族化に伴って、近年の葬儀の形態はシンプルになっている。そこで注目を集めているのが「家族葬」だ。しかし、実際の内容はどんなものか? 親戚にはどこまで連絡をするべきか? 会社や友人などにはあいさつ状を出すべきか? 香典や供花などを辞退しても失礼に当たらないのか? 費用の相場は? など知らないことも多い。そこで「家族葬」とその他の葬儀の違いから、マナーやあいさつ状の文例、葬儀社の選び方までをまとめてご紹介したい。

■意外に知らない? お葬式のイロハ

 お通夜や葬儀に参列する機会はあっても、その詳細をしっかり理解しているかというと、そうでもないのが人の常。最初に、一般的なお葬式の基本を押さえておきたい。

 まず「通夜」とは、故人を葬る前に、遺族や知人が遺体のそばについて夜通し供養すること。しかし、現在は告別式に参加できない人のためのお別れの場として、葬儀の前日に数時間行う「半通夜」が主流になっている。「葬儀」とは死者を葬る儀式のことで、日本では仏式が主流。読経、祈祷、焼香、出棺、火葬などが含まれる。「告別式」は焼香や献花をして故人とお別れする儀式のことを指し、葬儀に含まれることが多い。

知っておきたい、葬儀にまつわる法律

 実は、葬儀に関しては特に法律はもうけられていない。法律上、葬儀が義務づけられているわけでも、葬儀や火葬の期限があるわけでもない。しかし、人が亡くなった場合には、いくつか守るべき法律があるので覚えておこう。

・死亡後24時間が経過しないと火葬、埋葬してはならない。

・医師に「死亡診断書」または「死体検案書」を作成してもらい、故人の本籍が置かれた市区町村の役所へ提出しなくてはならない。

・火葬場以外で遺体を火葬してはならない。

・墓地以外の区域に埋葬してはならない。

■家族葬とは? 一般的な葬儀の種類とその違い

 ひと言でお葬式といってもいろいろな形態があり、その規模もさまざまだ。今回取り上げているのは「家族葬」だが、実はその明確な定義はない。日本で一般的な葬儀のタイプとその概要を見てみよう。

親族以外も参列する【一般葬と合同葬・社葬】

 多くの場合は死亡の翌日に通夜を行い、翌々日に葬儀(告別式含む)を行う。合同葬・社葬は故人の属した組織と共同で行うもの。多くの場合は、会社主導となる。

身内だけで執り行う【家族葬と密葬】

 家族葬は、葬儀(告別式なし)のみ。故人の近親者だけが参加する。密葬は葬儀の後日、改めて本葬(告別式にあたる)やお別れ会を催す。大企業のトップや有名人がこのスタイルをとることが多い。

簡潔にすます【直葬と一日葬】

 直葬は、潔く火葬のみ。納棺したらそのまま出棺して火葬場へ直行する。一日葬は、葬儀(火葬、告別式を含む)が1日で完結。通夜は行わないが、身内以外の人も参列できる。

故人の生き方による【独自の葬儀】

 上記以外に、故人の生前の信仰に基づいて神式やキリスト教式で執り行う「宗教葬」、直葬から海山に散骨する「自然葬」、生きているうちに遺影の写真を用意して周囲へ思いを伝える「生前葬」などもある。

■香典、弔電、服装は? 知人や親戚が家族葬を行う場合のマナー

 周囲の人が亡くなると、それとなく耳に入ったり、訃報が回ってきたりして知ることも多い。家族葬の場合は事後にあいさつ状の形で周知されるケースがほとんどだが、事前に喪主からお知らせが届くこともある。そこに「葬儀は家族のみで執り行います」と書かれていた場合、どう対応するのがベターか?

 まず、参列の要請が明記されていない限り、式場へ足を運ぶべきではない。また、香典や供物などは、喪主が受けつけていない限り送る必要はない。これらには返礼がつきものなので、遺族の負担になる可能性があるからだ。ただし、自宅や斎場の住所などが載っている場合は、弔電を送るのはアリ。弔電には返礼の必要がないため、お悔やみを伝えるにはいい手段だといえる。

 故人との関係が深く、どうしても手を合わせたいのなら、後日、家族へ弔問に訪れたいと連絡してみよう。ただし、故人や遺族が家族葬を希望した想いを汲んで、そっとしておいてあげるのが思いやりだといえる。

 では、家族葬に会葬する(参列する)場合はどうだろう。こちらは香典も供物もOK。そこで最も頭を悩ませるのが、香典の額。こちらは家族葬か否かで違いはないものの、故人との関係や渡す側の年齢によって違ってくる。故人との血縁関係が近しいほど、額は大きくなるのが通例だ。参列する際の服装は、仏式の葬儀であれば喪服を着用しよう。ちなみに、後日弔問する場合は、地味な服装であれば喪服でなくとも問題ない。

■こんな場合におすすめ! 家族葬のメリットとデメリット

 まずは、故人の遺志である場合。また故人が高齢で、葬儀に呼ぶ人がそう多くない場合。 静かに、参列者へ気兼ねなくお別れをしたい場合。これらのケースでは、家族葬を選ぶといい。しかし、故人がそう高齢でなく、社会的な繋がりが盛んな場合は、手を合わせたいと思う人もたくさんいるかもしれないので考えもの。また、「スタッフや祭壇の飾り、精進落としの料理の数も少なくてすみそうだし、料金を安く抑えられそう」とイメージする人が多いが、結果的にはそうでもないパターンが多い。以下のメリットとデメリットを比較しておこう。

家族葬のメリットは?

・少人数なので、故人と落ち着いてお別れをできる。

・参列者が少ないので、当日の対応や香典返しなど、家族の負担が少ない。

家族葬のデメリットは?

・どこまでに知らせ、呼ぶのかの線引きが難しい。

・家族葬の定義が曖昧なため、葬儀費用の比較が難しい。

・参列者が少ない=香典も少ないので、費用負担の割合が大きくなる。

■家族葬の流れ

【臨終当日】

  • 1)葬儀社へ連絡
  • 2)専用の寝台車にて病院から自宅や安置所への移送、お迎え
  • 3)葬儀社との打ち合わせ
  • 4)身内への連絡
  • 5)死亡届を役所へ提出し、火葬許可書の交付を受ける(多くの場合、手続きは葬儀社が代行)
  • 6)家族のみでの納棺、通夜(葬儀の前日の場合もある)

【臨終翌日以降】

  • 1)葬儀(葬儀場や自宅にて)
  • 2)火葬場へ向け出棺
  • 3)火葬
  • 4)拾骨
  • 5)初七日法要(繰り上げて葬儀当日に行うのが一般的)
  • 6)精進落とし(参列者と食事)

いつ知らせる? どこまで呼ぶ?

 参列者は、喪主、喪主と故人の家族(祖父母、親、兄弟、子とその配偶者、孫ぐらいまで)が妥当。その他は故人との関係性による。家族ぐるみのつきあいをしていたような人物なら、声をかけてもいい。参列者以外には、葬儀を終えた2週間以内を目安にあいさつ状を出すのが一般的。

家族葬の料金相場は?

 そもそも、家族葬の定義がハッキリしていないので一概には言えない。30~100万円と、料金には開きがあるが、大手の葬儀社で打ち出しているセットプランは40万円前後が多い。

■家族葬で喪主が気をつけるべき落とし穴と対策法

葬儀社とのトラブル

「支払い時に、見積書になかった追加料金を請求された」、「病院から紹介された葬儀社に家への移送を頼んだら、なし崩しに葬儀も依頼することになって高くついた」といった話を耳にしたことはないだろうか。こと家族葬となると、適正な内容や料金の見極めは難しい。

【対策と葬儀社選びのポイント】

 複数の葬儀社から見積もりを取り、比較検討する必要がある。難しいことだが、生前から目星をつけておくのが一番だ。近年では”終活”の一環として、残された家族の負担にならないようにと、自分の葬儀の仮予約をしておく人もいる。

 葬儀社が設定するセット料金を利用するケースがほとんどだろう。葬儀には実に細々とした備品が必要になる。見積書の片隅に、小さく「別途費用」などと記載されていないか注意して見るべきだ。担当者がひとつひとつ丁寧に説明してくれ、こちらの希望に耳を貸し、細かい点まで相談に乗ってくれるなら安心だ。

親戚、友人知人とのトラブル

 よくあるのが「火葬後に親族へ連絡したら、不義理だと揉めごとになった」、「生前お世話になったので手を合わせたかったのに、なぜ知らせてくれなかったのか、と苦情がきた」、「セレモニーホールでの家族葬前に自宅で安置したことで、近所の人が弔問に来てしまった」というもの。周囲に家族葬を選んだ理由をしっかりと伝え、理解してもらうことが重要!

【対策】

・親戚には亡くなる前や直後に、葬儀の方法について周知しておく。

・近所へは町内会などを通じ、家族葬である旨、弔問や香典はお断りする旨を周知する。

・事後のあいさつ状は2週間以内に届くよう手配する。

●あいさつ状の例文

・あいさつ状の例文(実際は縦書き。句読点は使わない)

祖父 ◎◎◎◎(※故人の名前) 去る◎月◎日に◎歳にて永眠致しました 
尚 葬儀は故人の遺志により 近親者のみにて相済ませました
お知らせが遅れましたことを 心よりお詫び申し上げます
御供物 御香典につきましても 故人の遺志によりご辞退申し上げます
茲に故人が生前に賜りましたご厚情に深謝し 慎んでご報告申し上げます
今後も変わらぬご厚誼のほど宜しくお願い申し上げます

平成◎年◎月◎日
◎市◎区◎-◎-◎
◎◎◎◎(※差し出し人の名前)

■まとめ

 家族葬というのは、こぢんまりとお葬式をやりたい人が増えているため、葬儀社が小規模の葬儀に対してつけた呼び方だ。遺族の希望に沿ってアレンジをすることができるが、そこにつけ込んでデタラメな内容や料金をふっかけられては、たまったものではない。いざ近しい人が亡くなったときに慌てないよう、家族葬のイロハを知っておいて損はないだろう。

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