日本では60歳を還暦と呼び、人生における区切りの年齢として祝う習慣がある。とはいえ、昨今の60歳はまだまだ元気で現役で活躍している人も多いため、古いしきたりや伝統的な祝い方はそぐわなくなってきているのも事実だ。今回は還暦祝いについて、今でも守るべき常識的なマナーと、最近のアクティブシニアにふさわしいプレゼントやお祝いのやり方を調査してみた。
■意外と知らない!?「還暦祝い」の由来と基礎知識
●還暦とは
還暦(かんれき)とは、数え年61(満60)歳になったことを祝う通過儀礼である。還暦のほかに本卦(ほんけ)還りという言い方もあるが、どちらも十干十二支(じっかんじゅうにゅし、干支のこと)が60年かけて一巡し、再び生まれ年と同じ干支に戻ることが由来になっている。
また、「華甲」(かこう)という別称もある。「華」という字は6つの「十」の字と、一つの「一」の字から成り立っており、甲が最初の干支である甲子(きのえね)を表して歳を意味するためで、数え年で61を表すためである。
●なぜ還暦を祝うのか?
日本には古くから数え年で40歳以降は10年ごとに年祝いを行う習慣があった。特に還暦の61歳、古希(こき)の70歳、喜寿(きじゅ)の77歳、米寿(べいじゅ)の88歳、白寿(はくじゅ)の99歳は、「賀寿」(がじゅ)や「算賀」(さんが)、「賀の祝い」(がのいわい)、「年祝」(としいわい)などと呼ばれ、長寿を盛大にお祝いしていた。古希以上は中世から見られた古い慣習だが、還暦に関しては少し後、室町時代の末ごろから始まったといわれている。
●赤いちゃんちゃんこの由来
暦が還ることを意味する還暦では、再び赤ちゃんに戻る、新しく生まれ直すということで、赤いちゃんちゃんこや頭巾、座布団などを贈るのが定番である。赤は魔除けの色とされ、赤ちゃんの産着に使われてきた歴史があるからだ。
■関係性によって変わる!?「還暦祝い」の金額相場
●還暦祝いの金額相場
還暦祝いに贈るプレゼントの予算金額の相場は、特に決まっているわけではない。地域や還暦を迎える本人との関係性によって大きく異なるため、以下はあくまでも参考程度の目安と考えてもらいたい。
□両親:1〜10万円
□義両親:3〜5万円
□祖父母:1〜3万円
□親戚:5000〜2万円
□上司や恩師など:5000〜1万円
●現金を渡す場合のマナー
現金にするときは祝儀袋に入れて渡そう。お祝いごとではのしと水引がついた袋を使うのが通例である。
水引は紅白か金銀の「蝶結び」を選ぶ。「蝶結び」は何度でもほどいたり結び直しができることから、「何度あってもいいこと」として使用する。逆に、「結び切り」は「二度と繰り返さない」という意味があるので、NGだ。
表書きには、水引の上に「還暦御祝」「祝還暦」「御還暦御祝」「賀華甲」「感謝」などの言葉を書き、水引の下に「家族一同」や贈り主の名前を入れる。
■これが一般的!? 還暦祝いのおすすめプレゼント
還暦には赤いちゃんちゃんこなどを贈るのが定番だと前述したが、最近では伝統的な色や品物にこだわることなく、本人がもらって嬉しいもの、第2の人生の門出にふさわしいものなどをプレゼントする人が増えてきている。
□食事会
普段は行かないようなレストランでおいしい料理を囲む食事会は、男女ともに喜ばれる。特に離れて暮らしているケースなどでは、同じ時間や空間を共有すること自体に価値が出る。
□酒類
自分では買わないようなグレードが高いお酒は、アルコールを嗜む人なら大歓迎だ。赤色を意識するなら赤ワインやロゼワインがおすすめ。
□花
女性に喜ばれる。色にこだわるなら赤いバラがよいだろう。プリザーブドフラワーやボトルフラワーにすれば長期間楽しんでもらえる。
□旅行
日常の雑事から離れて、疲れを癒してもらう旅行は人気がある。夫婦水入らずでのんびり過ごしてもらうはもちろん、孫を連れて行って3世代でワイワイ賑やかに過ごすのも楽しい。
□趣味グッズ
今後はゆっくり遊んでほしいという意味を込めて、趣味を応援するグッズを贈るのもおすすめだ。
●これは贈っちゃダメ! NGな還暦祝い
贈ってはいけないNGな還暦祝いは、死や老いを意識させるようなもの、年長者への礼を欠くものである。
□老人用グッズ
老眼鏡や補聴器、杖などは老人扱いすることになる。
□くし
名前から苦と死を連想させてしまう。
□日本茶
香典返しの定番のため、死を連想させてしまう。
□時計・文房具・バッグ
勤勉さを象徴するため、もっと働けというメッセージになる。
□家事グッズ
こちらも、もっと家事をしろというメッセージになる。
□履物や下着、敷物
踏んでいく、下敷きにするというメッセージになる。
■還暦祝いに添えたいシンプルな手紙/メッセージの例文
還暦を祝う手紙やメッセージの内容に、これといった決まり事はない。しかし、文面にはお祝いの言葉、感謝の気持ち、未来への希望などを入れるといいだろう。いくつかの文例を紹介するので参考にしてほしい。
□カジュアル系
両親や祖父母など、極めて親しい間柄にふさわしい。形式にとらわれることなく、たくさんの愛情と親しみを込めよう。
○○へ
- 還暦おめでとう。
- ○○の支えがあったからこそ、
- 今こうして幸せな毎日を過ごすことができているよ。
- これからも無理せず、楽しい時間を過ごしてね。
○○より
□ノーマル系
義父母や親戚などに向いている。近しい人でもきちんとしたいときや、仕事関係の人でもプライベート感を出したいときなどにも使うことができる。
○○さん
- 還暦おめでとうございます。
- いつも素敵な○○さんにお会いするたびに、
- 自分も同じように年齢を重ねてみたいと思わずにはいられません。
- 今後ともお体に気をつけて、素敵な○○さんでいていただけると嬉しく思います。
○○より
□フォーマル系
仕事関係の人や恩師などに送るときは、失礼なく日頃の感謝と敬意を表すために、常識的なマナーを守った正式な書き方をしよう。
- 謹啓
- (時候のあいさつ)
- 謹んで還暦のお祝いを申し上げます。
- 平素からの並々ならぬご指導ご厚情に感謝と敬意を込めまして、
- 心ばかりのお祝いの品を贈らせていただきました。
- ご受納いただければ幸甚に存じます。
- 今後もこれまで以上のご壮健とご活躍を心よりお祈りしております。
- (結びのあいさつ)
- 謹白
- ○○年○○月○○日
- ○○○○
- ○○○○様
■まとめ
還暦祝いをする上で最も大切なことは、人生で60回目となる誕生日を大切な記念日として扱い、感謝の気持ちを込めて心からお祝いすること。ずっと元気でいてくれるように、もっと笑顔でいてくれるように願おう。