今回はキタサンブラックのラストラン、有馬記念のことをお話しましょう。ファン投票第1位。単勝1.9倍。パドックにはキタサンブラックを応援する10枚もの横断幕が翻り、スタンドを見上げると、人、人、人……このレースを見ようと駆けつけてくれた10万人もの人で、ぎっしりと埋まっていました。

――とにかく、このレース一つに集中したい。それは、僕のわがままだったかもしれません。

――騎乗依頼をされたら、乗れる限り、すべて乗る。自ら決めたルールを破ることにもなります。でも。それでも、クリスマスイブ決戦となった12月24日は、キタサンブラックとのレースに集中したいという気持ちが大きく勝っていました。

 21日に行われた公開枠順抽選会……この手でつかみ取った馬番は、1枠2番。一番欲しかった番号です。最終追い切りの翌日、坂路を駆け上がったキタサンブラックの馬体は、翌年も十分に走れるほど完璧な状態でした。

――スタートが良ければ、そのまま、先手を取ろう。レース展開も、思い描いていた通りのもので、すべて100%。迷いは微塵もありませんでした。ただ……ゴールしたそのときまで、“これでもう、大丈夫”と思った瞬間はありませんでした。とにかく、1メートルずつ、1完歩ずつ、一つ一つ丁寧に。それだけを思い、最後は、“あと、少し”“頑張れ!” キタサンブラックの息遣いを感じながら、祈るような思いで、ゴール板を目指していました。

 JRA最多タイとなるG1・7勝。歴代獲得賞金第1位。スタンドからシャワーのように降り注ぐ、“ユタカコール”は、騎手として最高の勲章でした。

■北島三郎が『ありがとう キタサンブラック』『まつり』を熱唱!

 5万人ものファンが残ってくれたセレモニーでは、勝負服と同じカラーの法被を着て(着せられて?)、北島三郎さんが作った新曲『ありがとう キタサンブラック』に続き、封印していた『まつり』を堪能させてもらいました。

 今、改めて、キタサンブラックにかける言葉があるとしたら……やっぱり、“ありがとう”です。出逢えたことに、ともに闘えたことに、騎手としてまた一つ成長させてもらえたことに感謝しています。

 このキタサンブラックの引退式が、1月7日、京都競馬終了後に行われました。寂しさですか? もちろん、あります。あれだけの馬ですからね。でも、いずれ彼の子どもたちがデビューする日を楽しみに、そのときにまた、指名していただけるような騎手になっていられるよう、さらに努力を続けたいと思います。

 2018年も、競馬を、武豊を応援してください。よろしくお願い致します。

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