先週は関東大震災を描き、いよいよ時代を色濃く映し始めたNHK連続テレビ小説『わろてんか』。なにせヒロインのてん(葵わかな/19)が若いだけに、ネットでは他の芸達者な出演陣が話題になることが多い。だが、最近はけなげで前向きな“てん(葵)らしさ”が板についてきて、物語前半より、芝居もうまくなったような気がする。そんな中、先週は今後の『わろてんか』への伏線と思えるシーンがあったので、考えてみたい。
それは1月13日土曜日の放送回。まず振り返ってみよう。てんたちは関東大震災で被災した伊能(高橋一生/37)の実の母、志乃(銀粉蝶/65)の面倒をみていた。その志乃が東京へ戻る日が近づき、風鳥亭の一同は送別会を開くことに。
志乃を東京の母と慕っていたキース(大野拓朗/29)が、彼女が息子の自慢話をしていたという逸話を披露すると、てんの子どもである隼也(南岐佐/8)が、志乃に息子の名前の由来を聞き、志乃が伊能の「栞」という名前の由来を切々と語った。伊能はその言葉に胸を熱くし、涙ぐみながら母である志乃への感謝の気持ちを述べた。
その後、東京へ行っていた風太(濱田岳/29)が帰ってくると、トキ(徳永えり/29)は涙ながらに風太を迎えた。
志乃と伊能の感動的な昔話も良かったが、実は先週の『わろてんか』では、キースに注目していた。というのも、彼らの万歳(まんざい*番組表記ママ)のシーンが見たかったからだ。土曜日は過去にも喜楽亭文鳥(笹野高史/69)、月の井団真(北村有起哉/43)が見事な落語を披露して、話題となった。同じ土曜日だっただけに、キースとアサリ(前野朋哉/32)のどつき万歳が一瞬しか流れなかったのは残念だった。しかし、これは将来への伏線じゃないか?
キースとアサリのコンビのモデルは、エンタツアチャコという、実在した伝説的万歳コンビの横山エンタツと花菱アチャコだ。この二人が一世を風靡したのが1930年以降なので、史実通りにストーリーが進めば、これからいよいよブレイクするはず。万歳シーンが小出しなのは、今後、ガチッと万歳シーンを見せたいからではないだろうか。
■『とと姉ちゃん』での演技を越えられるか!?
ならば、俳優である大野拓朗の芝居に期待がかかる。大野は映画、ドラマ、さらに舞台と幅広く活躍する実力派イケメンだが、コミカルな芝居もうまい。2016年上半期の朝ドラ『とと姉ちゃん』ではヒロインである常子(高畑充希/26)の、血がつながってない叔父、清を演じ、そのウザキャラが話題になった。
今回のキースも腹立たしいけど、どこか憎めないひょうきん者だ。あれだけのイケメンなのに、朝ドラサイドが大野に求めるのは、なぜかいつも「笑い」。しかし、これは期待の表れに他ならないだろう。
と思えば、先週の関東大震災のシーンではシリアスな芝居を連発して、演技派の一面も見せた。モデルのエンタツアチャコは万歳で成功したが、はたしてキースたちはどうか。笑いもとれて大人の演技もきっちりできる大野ならば、万歳で視聴者をアッと言わせてくれるはずだ。(半澤則吉)
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