昨今、問題となっているのが、高齢者ドライバーによる自動車事故。1月9日にも、群馬県前橋市で女子高生2人が被害に遭った。全国紙記者が解説する。「歩いていた女子高生2人に、乗用車が逆走する形で、猛然と突っ込み、2人が重傷を負った。運転手は85歳の男で、老人福祉センターに向かう途中でした」
この男性、家族から免許証の返納を勧められていたという。物損事故を繰り返していたため、大事故が懸念されていたからだ。「ここ数年、免許証の返納件数は激増。高齢運転者が引き起こす悲惨な事故が報道されるたびに、家族が返納をうながしたことが、理由と思われます。一方、返納を渋る高齢者も多い。惨事を招かないためにも、返納時期の見極めは重要です」(前同)
“まだまだ衰えていない”その思いが返納の“壁”を高くしているというが、事故を起こしてしまったら何の意味もない。そこで、誰もが知っておくべき、返納のタイミングを紹介しよう。まず、車体をこするなど軽度の接触が65歳を超えて増加している人は、危険水域にあるという。説明するのは、交通ジャーナリストの村松虎太郎氏である。「前橋の事故の運転手男性も、直前に事故が多くなっていたそうですからね。また、そこまでいかなくても、ウインカーやヘッドライトのつけ忘れ、急ブレーキなどが増えたら、“合図”の一つでしょう」
そうなる前に、ふだんからできるチェックもある。「定期的に家族を乗せて運転し、チェックしてもらうんです。何回も乗ってもらえば、“最近、左折がぎこちないよ”“車庫入れの切り返しの回数が増えたね”などと変化を指摘してもらえます。そして、その変化こそ、返納の見極めの重要な要素です」(前同)
また、運転中に些細なミスをしただけで、頭が真っ白になるようになったときも、タイミングの一つ。「事故を起こした高齢者ドライバーで多いのが、少しのミスでパニックになり、大事故に発展させてしまうこと。心身ともに余裕がなくなったら、潮時と捉えてください」(同)
とはいえ、自動車なしでは生活できない環境の人も多いだろう。そんな人に取り入れてほしいのが、“ルール作り”だ。具体的には、〈運転していい場所と道を限定する〉〈晴れた日中しか運転しない〉などだ。「スーパー、郵便局、田畑など、決めた場所にしか運転しないんです。もし、このルールから外れる場合、誰かに一緒に乗ってもらうなどの特別ルールを設けるといいでしょう」(同)
75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は、直近の10年以上400件超えを記録し続けている。自分はまだ大丈夫という認識が、実は一番危ないことを肝に銘じてほしい――。