レースに向けて、馬の状態を最高レベルまで持っていくため、レース本番の3~4日前の早朝に、栗東でも、美浦でも、最終追い切りが行われます。このとき、本番と同じ騎手が乗るのか、いつもと同じ人が乗るのか、調教師の先生の考え方によって、それぞれですが、休み明けで久しぶりに乗ることになった馬の場合は、ここで感触を確かめられるということも少なくありません。

 G3「東京新聞杯」に快勝したリスグラシューも、そんな一頭でした。昨年の牝馬三冠では、桜花賞2着、オークス5着、秋華賞2着。あと一歩が届かず、馬自身も、関係者の方も、僕も、悔しい思いをしてきました。理由は一つではありません。しかし、飼い食いが細く、体重管理に苦労したり、精神的に大人になりきれずイライラしていたというのも、その中の一つです。

――いいほうに変わっていたら、いいな。調教に乗る日は、夜明け前に家を出るのですが、あの日は、ハンドルを握りながら、ワクワクしていたような気がします。期待は的中。坂路での最終追い切りでは、自己ベストのタイムを記録。線が細かった体が、一回り大きくなり、精神的にも落ち着いていました。競馬ですから、――絶対に勝てる。とまでは言えませんが、この時点で、パートナーに対して、確かな感触をつかんでいました。

「動きも、息の入り方も良かった。距離の融通もきく馬だし、牡馬相手でも楽しみ。久しぶりに1着が欲しいね」 そのとき、スポーツ紙に載ったのが、このコメント。本誌の連載には、「負けるわけにはいきません」と書かせていただきました。

――馬の力をすべて引き出せれば勝ち負けになる。気持ち的には、勝てるかもしれないではなく、勝てるはずだ……いや、勝ちたい! そんなふうに思っていたような気がします。悲願のビッグタイトル、G1「ヴィクトリアマイル」(5月13日)に向けて、視界は良好です。

■今週の競馬はG1フェブラリーステークス!

 今週の競馬は、その2018年G1戦線の口火を切る、「フェブラリーステークス」(ダート1600メートル)が待っています。ここで一発を狙う僕のパートナーは、8歳馬のアウォーディー。ちょっと意外な感じもしますが、これが初めてのマイル挑戦になります。

 彼がビッグタイトルを手にしたのは、一昨年11月の「JBCクラシック」でした。僕も、関係者も、ファンの方も、当時は“どこまで強くなるんだろう!?”と胸を弾ませましたが、そこからは惜敗続き。前走の交流G1「川崎記念」も、彼らしい競馬がほとんどできないまま終わってしまいました。

 距離が変わることで、精神面も一変してくれるかもしれない。応援し続けてくれるファンのためにも、“オジサン、ここに在り!”という競馬をお見せしたいと思っています。

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