渡辺謙
渡辺謙

 鈴木亮平(35)が主演を務めるNHKの大河ドラマ西郷どん』も、放送開始から4か月あまり。第15回の放送では、早くも物語前半のハイライトを迎えた。鈴木が演じる西郷吉之助のアツさもいつも以上だったが、渡辺謙(58)が見事に演じ切った島津斉彬の死、なんといってもこれが最大のトピックスだ。まずは内容を振り返ってみよう。

 持病が悪化し、病床に倒れた徳川家定(又吉直樹/37)。井伊直弼(佐野史郎/63)は、そこにつけこんで幕府の最高職、大老に就任し、次期将軍を紀州の慶福(荒木飛羽/12)にすると宣言した。京都でそのことを耳にした吉之助は、斉彬の元へと駆けるが、斉彬は敗北を認め、吉之助を庭方の役から解いてしまう。放心状態で家に帰ってきた吉之助は、その夜、大久保正助(瑛太/35)に励まされ、再び立ち上がる。その後、吉之助は斉彬に兵を挙げ、京都に向かうことを直談判すると、斉彬は腹を決め、再び京で会うことを誓う。しかし、その後、斉彬は病に倒れ、命を落としてしまうのだった。

渡辺謙がかつて役者魂を受け継いだ名優とは?

「今からおまえはわしになれ」という、斉彬の言葉にグッときた視聴者も多かっただろう。急死した斉彬に対し、ショックを受けた人も多かったようで、ネット上では「斉彬ロス」の声も上がった。斉彬と吉之助の密な関係は、すなわち俳優としての渡辺謙と鈴木亮平の師弟関係が作り上げたものとも言え、この一つのセリフから、これからのドラマを鈴木に託す、という渡辺の想いも伝わってきた。役者魂というバトンを渡す見事なシーンだったが、このバトンは、渡辺謙が31年前、ある俳優から引き継いだものだったのかもしれない。

 1987年、渡辺謙は大河ドラマ『独眼竜政宗』に27歳の若さで主演に抜擢された。このとき渡辺に役者魂を注入したといわれるのが、今は亡き勝新太郎だ。座頭市シリーズなどで知られる、この昭和の名優が演じたのは、豊臣秀吉。若き渡辺謙のはつらつとした芝居と勝新の怪演もあり、ドラマは歴史的なヒットとなった。その成功の裏には、ある演出があったそうだ。

 二人は主要キャストながら、初対面になる「小田原攻め」のシーンまで、一度も顔を合わせなかったというのだ。おかげで現場全体に緊張感が生まれ、この場面は名シーンとして語り継がれることとなった。後に渡辺はドラマを通し、勝新太郎からいろいろなものを学んだと語っている。

 今回の『西郷どん』でも、第5話の相撲シーンまで鈴木亮平と渡辺謙はあえて関わりを持たなかったという。そう、『独眼竜政宗』と同じ演出がなされていたのだ。勝新太郎から渡辺謙へ、そして渡辺謙から鈴木亮平へとつながれた名優のバトン。そんな役者たちの想いを感じながら見ると、大河もさらに面白さを増す。今回のドラマでの、渡辺謙の出番は終わったが、今度は坂本龍馬役に小栗旬(35)が決定するなど、今後も豪華な俳優陣が続々と出演する。鈴木亮平に引き継がれた役者魂は、さらに燃え上がるに違いない!(半澤則吉)

あわせて読む:
・『西郷どん』、松田翔太が一橋慶喜を演じるのは必然だった!?