たとえて言うなら眠狂四郎の「円月殺法」か。ただ、この男のバットは月夜じゃなくても抜群の切れ味を見せる。個人的には今、セ・リーグで最も気になるバッターだ。

 昨季の首位打者、横浜DeNAの宮崎敏郎が2年連続首位打者に向け、好調をキープしている。5月23日現在、打率3割1分2厘でセ・リーグの7位に付けている。

「僕はイメージ的にはバットを下から出すんですよ」 とは言っても、いわゆるアッパースイングではない。上からバットを振り下ろし、そのまま円を描くように天に向かってスイングするのである。

「いわばタテの円なんです」 これが“宮崎流円月殺法”の極意だ。通常、円を描くというと、円盤投げのような“ヨコの円”を想像するが、宮崎のスイングは、この対極に位置する。

■落合博満や中村紀洋に似ている

 フォーム的には3冠王3度の落合博満に似ている。バットを立て、右足に重心を乗せ、ポイントを後ろに置く。じっくりとボールを見極める時間が長いため、三振が少ない。昨季は規定打席に達したセ・リーグのバッターの中で最も三振が少なかった。

 もうひとり似ている名選手がいる。日米通算2106安打の中村紀洋だ。柔らかいリストワークは現役時代のノリを彷彿とさせる。そういえば落合もノリも、いわゆる非エリート系の選手だ。独自の発想でオンリーワンの打撃技術を磨き上げた。宮崎もこの系譜に連なる選手である。

■巨人の菅野智之を苦手としているが

 このように球界屈指の職人的技術を持つ宮崎だが、苦手にしているピッチャーがいる。巨人の菅野智之だ。4月20日から5月18日にかけて29イニング無失点を記録している。宮崎によると、「全部のボールが一級品」だというのである。「特にスライダーは尋常ではない。壁に当たってハネ返るような曲がり方をしますから」

 だが宮崎には、“魔球打ち”の秘策があるようだ。両雄の対決は、チームの勝敗を抜きにしても楽しめる。

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