新型コロナウイルス対策のため、無観客競馬も3週目となった3月15日、僕は51歳の誕生日を迎えました。毎年、スタンドからかけていただく、「誕生日おめでとう!」の声もなく、寂しさは否めません。

 4コーナーを回ったときにスタンドから沸き上がる地鳴り。ヤジと罵声。勝者に与えられる賞賛の声……あるべきものがないというのは、こんなに味気ないものなのかという思いが、競馬を重ねるごとに強くなっていきます。ファンあっての競馬ですから、一日も早く、競馬が元の姿に戻れるように願うばかりです。

 皆さんに祝っていただけないなら自分でと、より熱い競馬をしようと臨んだダート1800メートルの阪神競馬3レース3歳未勝利戦。1番人気のジローに騎乗し、バースデーVを飾ることができました。2着が続いていたジローにとって7戦目での初勝利となりましたが、1回ごとに競馬を覚えていっているところなので、クラスが上がっても十分に戦っていけると思います。

 皆さんに覚えていてほしいのは、続く4レースの3歳未勝利戦を勝ったデゼルです。父は、ディープインパクト。母は、フランスのオークスなどG1を2勝のアヴニールセルタン。すでにレースを経験しているライバルに対して、彼女にとってはこれがデビュー戦でした。乗り心地もよく、特に、スピードに乗ってからの走りは相当なものです。

――フランスでよく見る馬みたい。レース後、思わずそんな言葉が出てしまうほど、高い素質を秘めています。この先、どこまで強くなるのか、また一つ、楽しみが増えました。

 僕ら騎手がやることは一つ。目の前のレースに全力を尽くすことだけです。競馬ファンが心踊るような競馬を――。それだけを胸に秘めて騎乗します。

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