いま日本を代表する女性アイドルグループに目を向けてみると意外にも「選抜制度」というシステムをとるグループは減少傾向にある。AKB48の代名詞である選抜総選挙も2018年の開催から2年連続で行なわれておらず、今後も行なわれるかは分からない状況。そもそもアイドルにとって選抜制度って必要なのか? 様々な女性アイドルグループを例に出し、徹底的に考えてみよう。
2005年に誕生したAKB48は1期生として20人が加入した。翌年には全員でデビューシングル『桜の花びらたち』をリリース。だが人数が多すぎて活動しづらかったのか?
セカンドシングル『スカート、ひらり』では前田敦子、高橋みなみら7人をメインに置き、残りのメンバーはバックダンサーのような扱いをしている。ただ初出演の『ミュージックステーション』には全員で登場するなど、まだ大きな差はなかった。AKB48が明らかに選抜という制度を意識させたのはメジャーデビューシングルの『会いたかった』だろう。その当時、2期生が加入したことでメンバーは36人に増えており、その中から20人が選抜メンバーに選ばれた。当然、選ばれなかったメンバーはショックが大きく、応援するファンからは抗議する声があがった。
アイドルの選抜制度はプロ野球やプロサッカーのレギュラーと似ている。全員がプロではあるが、試合に出るのはそこから選ばれたメンバーのみ。ただアイドルは打率や防御率のような明確な数字がないため、選抜メンバーを選ぶのは難しい。運営スタッフは、ビジュアルやパフォーマンス、SNSの影響力などさまざまな尺度で、時には感覚で決めている。
アイドルにとって選抜メンバーに選ばれることはものすごく大きい。テレビや雑誌などの露出が増え、さらなるファンが獲得できる。もちろん仕事量も段違い、忙しいメンバーは寝る時間もなく仕事。一方で非選抜メンバーは1週間に数日しか仕事がない。収入も少ない。それが嫌になって卒業してしまうメンバーもいる。
選抜メンバーは運営が選ぶものであり、ファンは関与できない。そのシステムをぶち壊すものとしてAKB48が打ち出したのが選抜総選挙だった。選抜メンバーをファン投票で決めようというイベントだ。投票券をCDに付けたことでレコード会社は売上アップ、ファンは自分たちの力で推しメンを選抜メンバーに入れることができる。誰も損しない魔法のようなシステムであった。その熱狂はアイドルファンにとどまらず、開票の模様はテレビのゴールデンで生中継、結果が翌日のスポーツ紙の一面を飾るなど社会現象を巻き起こした。当時の絶対的センターであった前田敦子が大島優子に敗れた2010年の選抜総選挙は、前年に自民党が民主党に敗れた政治になぞらえ、政権交代と評されるなど、アイドルの選抜争いが国民的関心事になってしまった時代もあった。
そのほかに純粋に運だけで選抜メンバーを決める、じゃんけん大会も行なわれた。第1回では一度も選抜に入ったことのない内田眞由美が優勝し、前田敦子や小嶋陽菜といった選抜常連メンバーを従えて『チャンスの順番』を歌う様子は痛快でもあった。
(EX大衆2021年2月号「アイドルにとって選抜とは何かを考える」AKB48)取材・文●関根弘康
「アイドルにとって選抜とは何かを考える」
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