秋のG1シリーズが始まったばかりのこの時期に来年の話をすると、鬼に笑われるかもしれませんが(笑)、来年の三冠レースに向けて、また1頭、楽しみな馬が出てきました。
5回中京6日目に行われた2歳オープンの野路菊Sで、ワクワクするような勝ち方をしてくれたのは、シルバーステートの初年度産駒、父父がディープインパクト 、母父アグネスデジタル、母母父がダンスインザダークという、往年の競馬ファンにとっては、なんともたまらない血統を引き継いだ女の子、ロンです。
8月1日、函館で迎えた2歳新馬戦はスタートから先頭を走り、最後は余力を残したままゴール。少しゴーサインを出しただけで、スッと動ける反応のよさに、「次が楽しみだな」と感じたのは、僕だけではなかったと思います。
そして迎えた2戦目が、今年から距離2000メートルで施行されることになった、この野路菊S。距離が違うとはいえ、メイショウサムソン、ワグネリアンと2頭のダービー馬を輩出している出世レースです。うまく折り合ってくれればいいけど……。レース前に抱いた僕のそんな心配をよそに、脚をためたまま好位をキープしたロンは、残り300メートルあたりで右ステッキに鋭く反応。抜け出すときの脚は、ちょっと驚くほどの速さでした。
後続につけた着差は4馬身。勝ち時計、1分59秒8は、コースレコード。おまけと言ってはなんですが(笑)、この勝ちは、兄貴のような存在の石橋守先生が挙げた現役151人目のJRA通算100勝に。
「なかなか遅い達成にはなりましたが、これは一人でできるものではありません。オーナーをはじめ、一頭一頭の馬に携わるすべての人の協力があって、ここまでくることができました。スタッフのみんなに感謝して、これからも頑張りたいと思います」と、目を細めた石橋先生。本当におめでとうございます!
さぁ、そして10月2週め、今週末に行われる競馬ですが、凱旋門賞に騎乗するため渡仏した僕は、10日間の自宅待機。もちろん、乗りたいという気持ちはありますが、これはルールなので、それに従って感染対策に努めたいと思います。
東京競馬場で10月9日に行われるG3サウジアラビアロイヤルC。翌10日のG2毎日王冠、同日に阪神競馬場で予定されているG2京都大賞典は、テレビで競馬を楽しむつもりです。
有力馬に推された人気上位の馬たちが、どんな競馬をするのか!? 一発を狙うジョッキーは、どんな戦法で挑むのか? 視点を変えれば、一つのレースで、何通りもの楽しみ方ができるのが競馬の面白さです。もし、自分が乗っていたら……と、想像力を働かせながら見るのも、こういった状況だからできることです。焦らず、慌てず、観察眼を最大に発揮して、経過観察期間終了後の復帰戦に備えます。
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