1着馬に、天皇賞(秋)への優先出走権が与えられるG2京都大賞典とG2毎日王冠が、東西の競馬場を舞台に行われました。
京都大賞典を制したのは、2016年のダービー馬マカヒキ。最後に勝ったのが、同年にフランス・シャンティイ競馬場で行われたニエル賞ですから、実に5年ぶりに味わう勝利の味です。18年の天皇賞(秋)7着、19年の天皇賞(秋)10着、同年のジャパンC4着と、3度コンビを組ませていただいた馬の復活に、僕も思わず、目を細めていました。ハナ差2着のアリストテレス、自分の競馬に徹し、最後まで粘った3着のキセキと、見応えのあるレースでした。
東の毎日王冠は、最後の直線で、5歳馬のダノンキングリーと、3歳のシュネルマイスターが、激しい叩き合い。最後は終始、後方で脚をためにためていたシュネルマイスターが、クリストフ(・ルメール騎手)の合図に応えて末脚を爆発させ、ギリギリのところで、安田記念の勝ち馬ダノンキングリーを捉えました。
同レースを見ていて、もう一つ驚いたのは、本馬場入場のときに流れた入場曲とファンファーレでした。
――んっ!? これって、G1のときに流れる曲じゃあ……。僕と同じように気がついた方も多いと思います。この2曲は先日、お亡くなりになった作曲家、すぎやまこういち先生が作られた曲で、JRAから〈すぎやま氏への弔意を表すとともに、中央競馬に寄与した功績を称えるため、同氏制作の曲を使用した〉という発表がありました。
――やるなぁ、JRAも。思わず、ニヤリとしてしまいました。思いは同じで、ネット上には、「JRA最高!」という声や、「こんなの聞いたら、泣いちゃうやろ」という書き込みが、あふれたそうです。心躍るステキな曲をたくさん残してくださった、すぎやまこういち先生に感謝の気持ちを込めて合掌です。
コロナ自粛期間中のため、土・日ともにテレビ観戦していて、改めて気づいたのは、僕にとって競馬は、見るものではなく、乗るものだということです。20~30代の頃のように、もう乗りたくて乗りたくてウズウズするというようなことは、さすがになくなりましたが、その分、体の奥から湧き上がってくるような静かな闘志を感じています。
――この気持ちを今週末の競馬に。日曜は、ディープモンスターとともに3歳クラシック最後の一冠、菊花賞に挑みます。目指すは、スーパークリーク(1988年)、ダンスインザダーク(96年)、エアシャカール(2000年)、ディープインパクト(05年)、ワールドプレミア(19年)に続く、6度目の戴冠。簡単なことではありませんが、京都から替わった阪神競馬場に、大きな大輪の花を咲かせたいと思っています。
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