「日本で一番“滑舌の悪い”歌手」鉄板コテ之介「お好み焼きのコテを持つ歌手の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どえらいことになってます!の画像
鉄板コテ之介

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■神戸・長田を拠点に活躍する日本で一番“滑舌の悪い”歌手

 神戸の長田には独特な鉄板粉モン文化がある。この地では、お好み焼きには牛スジ肉とコンニャクを甘辛く煮た「ぼっかけ」を具に使うことが好まれる。また、麺とライスをソースに絡めて混ぜ焼きにする「そばめし」も、長田の名物B級グルメだ。

 そういった粉モンメニューを店員が金属製の起こしがね、通称「コテ」を操り、器用に焼く。濃厚なソースの香り、コテが鉄板の上で舞うスゴ技こそ、長田の原風景。JR「新長田」駅前の広場には、高さ3・4メートルもの巨大なコテのモニュメントが建っている。

「幼い頃は近所にお好み焼き屋さんが5軒もありました。土曜日のお昼になると、自宅からごはんを持参してお店へ行き、“おばちゃん、これで、そばめし焼いて~”と、よく頼んだものです」

 こう語るのは、長田を拠点に活躍するアーティスト、鉄板コテ之介さん。真っ赤なスーツに金色のエナメル靴。赤いハットには「命」と書かれたコテが直立。歌うは『ソースよ今夜もありがとう』『コテ街浪漫』『長田ソースシティ』など、むせ返るほど粉モン愛がほとばしっている。

●被災した街の人を笑顔にするために

 鉄板コテ之介の正体は、「上野刺繍」の二代目社長、上野栄一さん(63)。生まれも育ちも長田という生粋の地元民だ。中学時代にプレスリーに影響を受け、高校時代はロックンロールバンドのギターボーカルとして活躍した。同じバンドのベーシストだった岡田誠司氏は、のちに上京し、「MBSND」でメジャーデビュー。

 神戸に戻った岡田氏は、阪神・淡路大震災で甚大な被害にあった長田の復興のために尽力。漫画家の横山光輝氏が長田で青春時代を送ったことから『三国志』による町おこしを企て、上野さんに、諸葛孔明ならぬ「諸葛家小梅」というキャラクターにふんするよう依頼した。

「諸葛家小梅を2年くらいやった頃、仕事中に脳内出血し、右半身が麻痺しました。リハビリのさなかに東日本大震災が起き、自分の被災体験を思い出して、いたたまれなくなりましたね」

 復帰を目指してリハビリに励んでいたとき、親友の岡田氏から再び提案が。それが「鉄板コテ之介」。人前で歌うことが「運動療法につながるのではないか」という、岡田氏の思いやりだった。

「自分の体はもちろん、“震災があった長田の街が元気になるのなら”と引き受けました。現在も脳内出血の後遺症があり、ろれつが回りません。なので“日本で最も滑舌が悪い歌手”として活動しています。奇抜なファッションなので、初めて見た人は必ず笑いますね。それでいいんです。街の人が笑顔になってくれたら、うれしいんです」

 平成23年、「新長田」駅前の巨大コテモニュメントの除幕式でライブデビューした鉄板コテ之介さん。

 この日からおよそ10年、彼が歌うソース風味のコミックソングの数々は、今や、すっかり長田の“テッパン曲”として愛聴されている。

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

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