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連載100回記念 勝負師・武豊インタビュー

[週刊大衆10月20日号]

ダービー5勝の名手が本音を語った!

不世出の天才ジョッキー・武豊が本誌で連載を開始したのは、2012年9月24日発売号だった。それは、10年3月の落馬骨折(腰骨と左鎖骨骨折)の影響で、4か月の休養を余儀なくされ、2年近くにわたってGⅠ勝利から遠ざかっていた時期でもあった。あれから2年……連載開始と時を同じくして復活ロードを走り始めた武豊が、連載100回目を迎えた今号で、改めて激動の2年を振り返る――。

――連載を始めるに当たって掲載させていただいたインタビューで、2つのことを宣言されました。覚えていますか?

武豊 もちろん覚えていますよ。ひとつは、できるだけ早い時期にGⅠを勝つこと。もうひとつは、3年連続200勝したときのように、"必ず勝ちまくります"って言ったんですよね。

――最初の宣言であるGⅠ勝ちは、連載開始後、わずか2か月で成し遂げました。

武豊 サダムパテックとのコンビで挑んだ「マイルCS」でしたね。彼の最大の特徴を最大限に活かすために、道中は内に潜り込み、坂の下りから緩急をつけずに追い出して、最後の直線で先頭に立つ―作戦がハマった会心の勝利でした。

――ゴール板を駆け抜けた瞬間、スタンドはもちろん、検量室でも拍手が起こったと伺いましたが。

武豊 らしいですね。あとで聞いて驚きました。ユタカ・コールを聞いたのも、その前はいつだったのか、忘れるほど久しぶりだったし、競馬場を出て携帯電話の電源を入れると、おめとうメールや留守電がいっぱい入っていました。

――それだけたくさんの人が、武さんの復活を待ち望んでいた証です。

武豊 僕以上に周りが喜んでいるのを見て、"あー、そんなに長い間、勝っていなかったんだ"と、なんだか申し訳ないような気持ちになりましたね(苦笑)。

――それからさらに1か月後、新年号で実現した伊集院静氏との対談では、期待する馬としてキズナの名前を挙げていました。

武豊 最初は手探りの部分もあったんですけど、乗るたびに馬がどんどんよくなっていって。「日本ダービー」の前哨戦、「京都新聞杯」で勝ったときは、確かな手応えを感じていました。

――「日本ダービー」も勝てると?

武豊 いや、そこまでは。自分の馬が成長しているのと同じだけ、ほかの馬が成長していることだってあるし……競馬はやってみないとわかりませんから。キズナに関して言えば、勝ってもおかしくないし、勝てるだけの力は十分に持っている―すごくいい形で、「日本ダービー」を迎えられたということです。

――5度目の戴冠。スタンドの熱狂もすごかったですが、横山典弘騎手、蛯名正義騎手など同僚騎手の喜ぶ姿が印象に残っています。

武豊 検量室に戻るなり、ノリさんが抱きついてきましたからね。同世代の騎手から喜んでもらえたのは、すごく嬉しかったですね。みんな長い間、ずっと一緒に闘ってきた仲間ですから。

――秋はそのキズナとともに世界最高峰のレース「凱旋門賞」にも挑戦しました。

武豊 結果は4着でしたが、内容は満足というか、納得しています。勝ちにいってギリギリのところで勝負して、キズナの持ち味もすべて出し切れた―勝ちたかったけど、それは次の挑戦まで取っておきます。

――めげてもいないし、落ち込んでもいない?

武豊 全然、してないですね(笑)。すべては、いつかそこにたどり着くための一歩。悔しい思いをした分だけ、成し遂げたときの喜びは大きいと思っています。

――その言葉を証明するかのように、帰国から1か月後、トーセンラーをパートナーに「マイルCS」連覇を達成しました。

武豊 キズナで勝った「日本ダービー」が、JRA、地方、海外を合わせた99個目のGⅠ勝利。"あと1つ"と、せっつかれていましたからね(苦笑)。

――レース前は、初めての距離を心配する声がずいぶん上がっていましたが。

武豊 未経験をマイナス材料と捉えるか、それとも、プラスの可能性があると捉えるかですよね。トーセンラーの場合は十分、マイルでも通用するはずだというのが、僕と藤原英昭先生の一致した見解でした。中・長距離では勝ちきれなかったけれど、マイルにすることで、新しい何かが出せればと思っていました。

――連載開始からGⅠ勝利が3つ。しかも、いずれも強い勝ち方で、十分にインパクトを残したと思いますが、ご自身では、どう思われているんですか。

武豊 う~ん……という感じですね。勝利数もそうだし、今年の春も有力馬に乗せていただいたのに、ひとつも勝ててないですから。自分の中でも、モヤモヤしたものがあります。

――キズナの故障、そして武さん自身の落馬骨折もありました。

武豊 そこまでつきあわなくてもいいのにね(苦笑)。


「錦織圭選手が羨ましいです」

――この2年の間にレジェンドという言葉が流行り、武さんもその一人に挙げられています。

武豊 野球の山本昌さんとか、スキージャンプの葛西選手とか、サッカーのカズさん(三浦知良選手)とかの活躍を見ると、頑張らなきゃとは思いますが……僕はまだまだでしょう。

――でも、気がつくと、周りは後輩ばかりです。

武豊 確かにそうなんですけどね。でも、競争もしていないし、対抗意識もまったくない。僕は自分のやるべきことをやるだけ。勢いのある若手に出てきてほしいとも思わないし、出てきたら嫌だなというのもないし。ひと言で言うと、興味ないですね。ただ、自分自身が頑張るだけですから。

――競馬以外のスポーツへの対抗意識もない?

武豊 錦織圭選手が全米オープンの決勝に進んだのを見て、羨ましいなとは思いましたけどね。

――羨ましい……ですか?

武豊 皆さん、プレッシャーに負けたとか、勝ったとかと言いますが、錦織選手は、そこに立てたってことですからね。同じ競技者として、やっぱり羨ましい。

――なるほど。そういう見方をされるんですね。

武豊 それに、いろんな競技があって、どの競技も面白いとは思いますけど……。

――けど?

武豊 やっぱり、競馬が一番、面白いと思っているんで(笑)。そう思いませんか? 馬同士の力勝負、騎手と騎手の駆け引き、人馬一体となったときの迫力と華麗さ。天気、馬場状態、ペース、展開と……ひとつとして同じことはないし、すべてを読みきって、その一瞬にすべてかける。これ以上に面白いものはないと思いますよ。母から仔へ、父から仔へと受け継がれる血の魅力もあるし、やっぱり競馬が一番です。

――昨日より今日、今日より明日、少しでもうまくなっていたいと、以前からおっしゃっていますが、その気持ちは変わりませんか。

武豊 それは騎手を辞めるまで変わらないと思います。それだけ、競馬は難しいですからね。

――乗れば乗るほど、難しく感じる?

武豊 いや。最初からずっと、そう思っています。思い続けて何十年ですね(笑)。

――それでも、競馬ファンは武さんが勝つことを待っています。

武豊 秋はGⅠも勝ちたいし、ひとつでも多く勝ち星を増やしたい。来年はキズナも戻ってくるし、ジョッキー武豊が本格化するのは、これからですからね。

――秋競馬での活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。

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